記録AIは使い続けて効き、国内は電子カルテの認証と守りが動いた
10月は27日分、218本を取り上げました。論文72本、プレスリリース51本、ニュース95本で、ニュースが前月の38本から57本増えています。テーマでは生成AI・LLMが45本、電子カルテ・記録業務が40本、規制・実装・医療政策が35本で、規制・実装は前月の18本からほぼ倍になりました。臨床意思決定支援は29本から6本に減っています。
記録AI:時間は減ったが、時間外は減りきらなかった
記録AIは、使い続けた分だけ効く報告が続きました。プライマリケアの臨床医220人を追った研究では、記録時間が開始日に7%、150日後に16%減り(IRR 0.84)、パジャマタイムは150日後に19%減っています。開始日には時間外の作業に変化がありませんでした。救急の指導医275人でも、記録時間は中央値10.0分対12.5分でした。一方、EpicのAI返信下書きでは、使った返信は29.5%短くなったものの全体の返信時間は8.6%延び、時間外の返信は減りませんでした(P=.46)。
国内:電子カルテの認証制度が公表され、AIが中に入った
国内では、中小病院・診療所向け電子カルテの認証制度が10月16日に公表されました。上野厚労相は、脆弱性診断などの実施状況も審査すると会見で述べました。ヘンリーは受付初日に申請するとし、自社の直近1年の稼働率を99.943%と説明しています。CLIPLAは過去のカルテ記載をAIで要約する機能を11月から当面無償で出すと発表しました。いずれも企業側の発表です。
中小病院・診療所向け電子カルテの認証制度で、サイバーセキュリティー対策も審査するという上野厚生労働相の会見発言について、日本経済新聞が報じました。
- 上野厚労相は20日の会見で、2027年春に始まる認証制度で脆弱性診断などの実施状況の結果も審査すると述べた
- 要件には、事業者が安全性を自己評価する「医療情報セキュリティ開示書」の医療機関への提出、ペネトレーションテスト、定期的なパッチ適用が含まれる
出典:日本経済新聞 / 電子カルテの認証取得、サイバーセキュリティーも審査 上野厚労相
サトシ ペネトレーションテストまで要件に入るのは踏み込んでいます。中小の病院が自前で確認しにくい部分なので、認証が目安になると助かります。
ヘンリーが、厚生労働省の「医科診療所及び中小病院向け電子カルテの標準仕様に係る認証制度」に、受付初日の11月1日に申請するという発表。
- 認証制度は2026年10月16日に公表され、11月1日に施行。要件には単一コードベースのマルチテナント方式、稼働率99.9%以上、直近1年で30施設以上の稼働実績が含まれる
- 同社によると、Henryの直近1年の稼働率は99.943%、稼働施設は30以上で約8割が地方の病院
- 導入事例として、そのべ病院で月間の診療報酬収入が導入前の1.3倍になったと同社は説明している
出典:ヘンリー / ヘンリー、厚労省「電子カルテ標準仕様に係る認証制度」受付初日に申請へ
サトシ 認証の要件に稼働率や施設数まで数字で入ったのは大きいと思います。更新時期の病院は、まず認証の有無で候補を絞れそうです。
クラウド電子カルテ『CLIPLA』に、生成AIが過去のカルテ記載を要約して表示する「AIサマリー機能」を2026年11月から提供するという発表。
- カルテ画面でワンクリックすると、過去の主訴・所見・処置・処方の記載から要点を抽出し、同じ画面に要約を表示する
- 対象は『CLIPLA』シリーズ利用中の医療機関。料金は当面無償で、利用状況により将来有償化する場合があるとしている
- 記録を「書く」支援ではなく「読み返す」負担を対象にした点を新しさとして挙げている。利用はオプトイン方式で、データは国内で処理するという
出典:株式会社エムティーアイ / クラウド電子カルテ『CLIPLA』、生成AIによる「AIサマリー機能」の提供を開始
サトシ 書く支援ばかりの中で読み返す側に振ったのは面白いです。処方歴の要約がどこまで正確か、薬局側からも気になります。
サイバー:被害は導入先の外のシステムから来た
月内にはサイバー被害も続きました。産婦人科向けの「アットリンク」では最大787医療機関の患者情報が漏えいした可能性があり、MICINのオンライン診療では最大87人分の情報が閲覧されました。PHPの脆弱性「php2shell」(CVSS 9.2)では、ID-LinkのDICOMViewer機能や病院のウェブ問診が止まっています。どれも病院の電子カルテ本体ではなく、周りのサービスで起きた件でした。787という数字は、1つの業者の先にそれだけの医療機関がつながっていたことを示しています。
医療機関向けシステム「アットリンク」への不正アクセスで、最大787医療機関の患者情報が漏えいした可能性について、読売新聞が報じました。
- メドレーが10月15日に発表した。対象は主に産婦人科で使われる業務支援システム「アットリンク」と、患者向けの「アットリンクアプリ」など
- 外部の専門機関から10月11日に情報提供を受けて判明した。関連サービスは14日深夜から一時停止している
- 再開の見通しについて、メドレーは調査結果を踏まえて改めて知らせるとしている
出典:読売新聞 / 医療機関の予約システム「メドレー」に不正アクセス、最大787医療機関で患者の個人情報漏えいの可能性
サトシ 予約から電子カルテまで扱うシステムが止まると、受付も診療も回らなくなります。委託先の事故が現場にどう響くかを考えさせられる件です。
MICINのオンライン診療サービスに不正ログインがあり、最大87人分の患者情報が閲覧されたことについて、朝日新聞が報じました。
- MICINが10月27日に発表した。名前、メールアドレス、電話番号、受診状況など最大87人分が第三者に閲覧されたという
- 閲覧された可能性がある情報には医師によるメモも含まれる。本人確認書類やクレジットカードの情報は含まれていないとしている
出典:朝日新聞 / オンライン診療サービスに不正アクセス 最大87人分の患者情報閲覧
サトシ 受診状況や医師のメモは、件数が少なくても重い情報です。オンライン診療は患者側のログインも守る範囲に入るのだと改めて感じます
PHPの重大な脆弱性「php2shell」で、病院のウェブ問診や地域医療連携システムの一部機能が停止したことについて、医療テックニュースが報じました。
- 脆弱性は2件で、CVSS v4.0のスコアはいずれも9.2。開発元は10月21日に修正版を公開した
- ID-LinkのDICOMViewer機能が修正完了まで順次停止し、済生会宇都宮病院は健診のウェブ問診と予約を一時停止した
- 日医ORCA管理機構はWebORCAなど4サービスでPHPを使っておらず影響なしと発表。全日病は予約や問い合わせ機能も確認するよう会員に求めた
出典:医療テックニュース / PHP重大脆弱性「php2shell」、病院の医療システムにも影響 復旧と安全確認進む
サトシ 電子カルテ本体は無事でも、ウェブ問診や予約が止まると受付は一気に紙に戻ります。外注サイトの棚卸しは薬局も他人事ではないです。