2026年10月2日(金)のおすすめトピック

13本(論文7・リリース2・ニュース4)

家庭医がAIの利用を公表すると患者側の評価がどう変わるかを、医師と回答者の属性別に調べた論文。

  • 1030人に、AIの利用有無と医師の属性を変えた架空の家庭医の広告を見せて評価させるビネット研究
  • AIを使うと明示した医師は、使わないとした医師より温かさと能力の評価が低く、受診したい意向も下がった
  • この不利益は若い回答者で強かったが、医師の属性にはほぼ左右されなかった。実際の受診行動ではなく架空広告での評価

出典:★NPJ Digit Med / Influence of physician and consumer demographics on AI-use penalties in primary care: a vignette-based study.

サトシサトシ
若い世代ほどAI利用に厳しいというのは意外でした。院内で使っていても、患者向けにどう伝えるかは別の設計が要りそうです。

急性深部静脈血栓症の患者向け説明を、血管外科医11人と11種類のLLMに書かせて比べた論文。

  • スペイン語の標準化した症例について各1回答を作成し、盲検で8項目の臨床的妥当性と5つの読みやすさ指標で採点した横断研究
  • 妥当性の中央値は両群とも7/8で差はなかった(p=0.258)。LLMは回答のばらつきが小さく、4指標中3指標で読みやすかった
  • LLMの回答は長く(中央値903語対354語)、読むのに4.5分かかった。両群とも無症候性肺塞栓のスクリーニングに触れなかった

出典:Phlebology / Artificial intelligence and vascular surgeons in patient communication: A comparative analysis of intelligibility and clinical appropriateness in acute deep vein thrombosis.

サトシサトシ
両方とも同じ説明漏れがあったという結果が面白いです。AIと人の比較より、説明のひな形側の穴を見つけた研究として読みました。

救急外来から入院する患者の入院時アセスメントを、バーチャル看護と対面で比べた論文。

  • 米国南東部2病院の救急外来から2022年8月〜2023年12月に入院した成人を対象にした、非ランダム化の後ろ向きコホート研究
  • バーチャル看護ではアセスメントが平均3.16分長くかかったが、完了した記録項目数は有意に多く、中断の回数は有意に少なかった
  • 非ランダム化の後ろ向き研究で、記録の完全性と中断というワークフロー指標を見たもの。患者アウトカムは評価していない

出典:J Am Med Inform Assoc / Association of virtual nursing implementation with documentation completeness and interruptions in emergency departments.

サトシサトシ
3分長くなっても途中で呼ばれない方が記録は埋まる、という話は薬局の監査業務でも身に覚えがあります。中断の少なさは数字にしにくい価値です。

沖縄県の東部消防組合消防本部が、TXP Medicalの救急医療情報システム「NSER mobile」を2026年11月1日から本格導入するという発表。

  • 2025年6月の実証事業で出た現場の要望を受けて画面を改善し、2026年10月1日にプレ運用を始めた
  • 各救急隊にタブレットを配備し、参画医療機関とバイタルや処置内容をリアルタイムで共有する。手書き記録票と消防OAの二重入力をなくす
  • 管内の救急出動は年間5,000件超。活動時間の短縮や事務負担の軽減は発表側が期待する効果として挙げている

出典:TXP Medical / 東部消防組合消防本部救急医療情報システム「NSER mobile」を本格導入 〜令和7年実証実験でのフィードバックを活かし、令和8年11月より本運用開始〜

サトシサトシ
前日の兵庫の話に続いて、同じ基盤が地域を広げています。実証から本運用まで1年以上かけて画面を直したという経過が一番参考になりました。

恵寿総合病院が、入院患者がスマートウォッチで測ったバイタルを電子カルテへ自動記録する運用を2026年10月19日から本格的に始めるという発表。

  • HUAWEI WATCH D2を300台用意し、病棟のアクセスポイント経由で電子カルテと連携する。2027年1月中旬までに全病棟へ広げる
  • 測定は血圧・心拍数・SpO₂・皮膚温・睡眠の5項目で、うち血圧・心拍数・SpO₂は看護師の入力なしで電子カルテに反映される
  • 院内で運用する急変予測スコア(NEWS)の自動算出にもこのデータを使う。「世界初」は病院側の説明で、2025年6月から1病棟で実証していた

出典:社会医療法人財団董仙会 / (記者会見のご案内) [恵寿総合病院] 世界初、スマートウォッチで入院患者のバイタルを自動管理。本格運用の開始にあたり、10月19日(月)記者会見を開催 (会場・オンライン同時開催)

サトシサトシ
退院後も同じ市販の時計で続けられる、という設計が良いと思いました。入院中のデータを退院後の外来や薬局でどう見るかまでつながると面白いです。
ニュース その他

pafinがCT・MRIの検査画像を受診者のスマートフォンに転送するサービス「スマぞう」の販売を始めたことについて、医療テックニュースが報じました。

  • 医療機関が発行したCD・DVDを専用キオスク端末にセットし、内蔵Wi-Fiで受診者のスマホアプリへ直接転送する
  • 端末は院内LANやPACS、インターネットに接続しない。料金は1台あたり初期費用が税別30万円から、年間利用料が48万円から
  • 関東脳神経外科病院がすでに導入している。アプリは保管・閲覧用で、診断や読影には使わない

出典:医療テックニュース / pafin、CT・MRI画像スマホ転送サービス「スマぞう」開始 院内LAN・PACS接続不要で導入可能

サトシサトシ
紹介状にCDを添える運用はまだ多いので、院内ネットワークに触れずに置ける点は導入の壁を下げそうです。受け取る側の病院がどう扱うかも気になります。

医療AI推進機構が次世代医療基盤法に基づく認定作成事業者の認定を取得したことについて、インナビネットが報じました。

  • 認定匿名加工医療情報作成事業者と認定仮名加工医療情報作成事業者の認定を取得した。全国で4例目、単独事業者としては初
  • 医療機関の診療情報を研究開発用のデータセットに整え、医療AIの開発企業や研究機関に提供する事業を始める
  • CT・MRIの画像や手術・内視鏡の動画像を、診断や検査結果、治療経過と組み合わせたデータセットに注力するとしている

出典:インナビネット / 医療AI推進機構,次世代医療基盤法に基づく認定を取得

サトシサトシ
レセプト中心だった公的データに対して、内視鏡や手術の動画まで扱うという点が新しいところです。どれだけの病院が提供側に回るかが規模を決めそうです。

ローソンが東京都日野市のUR団地内にオンライン診療受診施設を開設したことについて、ダイヤモンド・チェーンストアオンラインが報じました。

  • 9月29日、ハッピーローソンタウン日野高幡台店の近接地に開設。KDDIのリモート接客プラットフォームを使う
  • 団地では2018年の閉院以降、医療機関がなかった。診療科は内科、アレルギー科、不眠症外来、発熱外来で、参画医療機関は2院
  • 処方箋が出れば店内併設のクオール薬局で薬を受け取れる。同社の店内ブースでのオンライン診療は港区と熊谷市の2店舗で実施中

出典:ダイヤモンド・チェーンストアオンライン / ローソン、東京都日野市の「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」近接地に「オンライン診療受診施設」を開設

サトシサトシ
診察から服薬指導までを同じ建物で済ませる形は、薬局側から見ると処方の流れがかなり読みやすくなります。団地の高齢者がどれだけ使うかを見てみたいです。

純音聴力検査とティンパノメトリーの読み取りと報告書作成を、工程ごとに分けてマルチモーダルAIで評価した論文。

  • 外来151人分155件の記録を使い、画像の転記と所見ルールの適用(モジュール1)、報告書作成(モジュール2)を別々に検証した
  • Codexのワークフローで数値閾値は1820件中1809件(99.4%)が完全一致したが、無反応の記載は15件中9件(60.0%)しか正しくなかった
  • DeepSeekでは無反応の一致が0%のままだった。著者は自律診断ではなく、監査可能な臨床支援として前向き評価を進めるべきとしている

出典:J Med Syst / Audiologist-Guided Multimodal AI for Pure-Tone Audiometry and Tympanometry Interpretation and Reporting.

サトシサトシ
全体の正解率が高くても「測れなかった」という記載だけ落ちる、という分け方の評価は実務に近いです。検査値の転記を任せる場面で同じ落とし穴がありそうです。

米国の民間保険加入者の精神科外来受診のうち、どれだけがオンラインで行われたかを2023〜2025年で調べた論文。

  • 6〜64歳の民間保険加入者184万3439人の外来メンタルヘルス受診2884万4298件を分析した後ろ向きコホート研究
  • 全体の77.6%がオンラインで、2023年の79.7%から2025年は76.2%に下がった。6〜12歳は37.1%、18〜24歳は77.0%だった(p<0.001)
  • 処方医では90.4%、心理療法士では75.7%。農村部は都市部より低く(70.3%対77.5%)、社会的脆弱性の高い地域では高かった

出典:Telemed J E Health / Disparities in Virtual Outpatient Mental Health Care Utilization Among Commercially Insured Children and Adults, 2023-2025.

サトシサトシ
公衆衛生上の緊急事態が終わっても8割近くがオンラインのままというのは、日本の感覚からするとかなり大きな数字です。

カリフォルニア州の処方監視プログラムのデータで作ったオピオイド長期使用の予測モデルを、ケンタッキー州で外部検証した論文。

  • 2021〜2023年にオピオイドを初めて処方されたケンタッキー州の98万5317人を対象に、較正し直したモデルと州独自の機械学習5種を比べた
  • 3.4%が長期使用に移行した。較正後のモデルのAUROCは0.919で、州独自の最良モデルXGBoost(0.930)と同程度だった
  • 陰性的中率は0.99を超えたが、陽性的中率はどのモデルも0.15〜0.19にとどまった

出典:JAMIA Open / Evaluating the validity and performance of a modifiable prediction model to predict new long-term opioid use in prescription drug monitoring programs.

サトシサトシ
州をまたいでも較正だけで使えるなら、自前でモデルを作れない機関には現実的な選択肢です。陽性的中率の低さは使い方で補う必要がありそうです。

直腸がんのMRIで壁外静脈浸潤(mrEMVI)をボクセル単位で自動検出するAIモデルを作り、予後との関連まで検証した論文。

  • 直腸がん患者2501人の多施設後ろ向き研究。1830人で学習し、2つの外部コホート計671人で検証した
  • 外部検証の正解率は81.5%と84.7%で、上級放射線科医との一致はκ=0.713〜0.736。AI判定の陽性群は3年無病生存率が62.3%対84.9%と低かった
  • 腫瘍のDice係数は0.850だったが、血管内腫瘍信号は0.442、拡張血管は0.335にとどまった。後ろ向きのデータで前向き検証はない

出典:PLOS Digit Health / Artificial intelligence for evaluation of magnetic resonance imaging-detected extramural vascular invasion in rectal cancer.

サトシサトシ
読影者によって判定が割れやすい所見を、予後との関連まで含めて検証しているのは説得力があります。

三重大学病院がAlbatrusのAI基幹システム「Apollo AI」の導入を始めたことについて、ZDNET Japanが報じました。

  • 既存の電子カルテと連携し、部門ごとに散在していた診療情報や患者情報をAIが横断的に参照できるようにした
  • 同病院は2025年度から同社の「メディラクAI」で症状詳記などの自動作成を進めており、その実績を踏まえた導入
  • 病院長とMUDX Initiativeの教授を中心にAI導入チームを作り、職種・部門ごとのプロジェクトチームで活用を検討する

出典:ZDNET Japan / 三重大学病院、AI基幹システム「Apollo AI」を導入--医療DXプロジェクトを推進

サトシサトシ
症状詳記という狭い用途から始めて基盤に広げる順番は、大学病院の導入としては手堅い進め方だと思います。