週刊Dose 2026年10月26日〜11月1日

6日分 / 全41本(ニュース20・論文6・リリース15)

サトシ

サトシの総括

医療DXエバンジェリスト/薬剤師

AI返信は使えば短く全体では延び、患者情報の事故が並んだ週

今週は41本を取り上げました。論文6本、プレスリリース15本、ニュース20本です。前週の46本から5本減り、リリースは11本から15本に増えました。テーマでは生成AI・LLMと電子カルテ・記録業務が9本ずつで一番多く、規制・実装・医療政策が8本と続きます。5点をつけたのは7本です。

記録と返信のAI:使った分は短く、全体では減らない報告も

記録と返信のAIを実測した論文が2本出ました。米国20の救急部門で指導医275人を比べた研究では、AIスクライブを使った記録の作業時間は中央値10.0分対12.5分でした。記録は約14%長く、書き始めは約15分遅くなっています。EpicのAI返信下書きを医師ら1542人、初回返信98万3154件で調べた研究では、ツールを使った返信は29.5%短縮した一方、全体の返信時間は8.6%延びました。時間外の返信は全体で減らず(P=.46)、勤務時間外に届いたメッセージでは4.52ポイント増えています。

救急医がAIスクライブを使った診療録と使わなかった診療録を、電子カルテの監査ログで比べた論文。

  • 米国の20の救急部門で、指導医275人の記録を同じ医師の中で比較した。使用の有無は診療録内の同意文言から判定した
  • AI使用は全診療の31%。記録の作業時間は中央値10.0分対12.5分(調整後2.4分短縮)で、記録は約14%長く、書き始めは約15分遅かった
  • 記録の完了は遅れず、72時間以内の再受診も増えなかった(-0.8ポイント)。観察研究で、無作為化はしていない

出典:Ann Emerg Med / Ambient Artificial Intelligence Scribe Use and Objective Documentation Effort Among Emergency Physicians.

サトシサトシ
自己申告ではなく監査ログで測っているのがいいところです。書き始めが遅れても完了は遅れない、という点が現場の実感に近そうです。

EpicのAI返信下書きツールが、患者ポータルへの返信時間と時間外の返信にどう関わったかを調べた論文。

  • コロンビア大学アービング医療センターで、医師ら1542人の初回返信98万3154件を後ろ向きに解析した
  • ツール導入で全体の返信時間は8.6%延びた一方、ツールを使った返信では29.5%短縮した(いずれもP<.001)
  • 時間外の返信は全体では減らなかった(P=.46)。勤務時間外に届いたメッセージではむしろ4.52ポイント増えた

出典:JAMA Netw Open / AI-Generated Draft Response Tool, Message Turnaround Time, and After-Hours Replies Among Health Care Professionals.

サトシサトシ
下書きがあると返信のハードルが下がって、夜に届いた分まで返してしまう。負担が減るどころか形を変えるだけ、という結果は現場感に近いです。

情報漏えい:不正ログイン87人分、未承認AIへ3182人分

患者情報の事故は、入口の違う2件が並びました。マイシンでは不正ログインで87人分の個人情報が流出した可能性があり、読売新聞によると厚労省は10月28日付で、パスワード管理の徹底やアクセスログの確認を求める通知を出しました。米ジョンズ・ホプキンス・ベイビュー医療センターでは、職員が許可されていない公開AIツールへ患者情報入りの表を誤ってアップロードし、3182人の情報が渡った可能性があります。病院は当日に把握し、患者への書面通知は10月22日でした。

ニュース 医療の質・安全 注目 2026-11-01

医療関連会社マイシンのシステムへの不正ログインを受け、厚生労働省が医療機関などに安全対策の強化を求めたことについて、読売新聞が報じました。

  • 厚労省によると、マイシンのシステムに10月23日に不正ログインがあり、住所や氏名、処方箋の画像を含む87人分の個人情報が流出した可能性がある
  • 厚労省は医療機関と医療情報システムの運営業者に、パスワード管理の徹底やアクセスログの確認を求める通知を10月28日付で出した
  • 同省はパスワードに指紋やパスキーを組み合わせる多要素認証の活用を求めている

出典:読売新聞 / 厚労省、医療機関などにシステムの安全対策強化求める…医療関連会社で87人分の個人情報など流出の可能性

サトシサトシ
処方箋の画像が含まれるのは薬局側としても他人事ではないです。多要素認証、うちの編集部でもまだ全部のツールには入っていません。

米ジョンズ・ホプキンス・ベイビュー医療センターで患者3182人の情報が未承認のAIツールに渡った可能性があることについて、Pasquale Pillitteriが報じました。

  • 病院がBecker's Hospital Reviewに出した声明によると、9月21日に職員が許可していない公開AIツールへ患者情報入りのスプレッドシートを誤ってアップロードした
  • 対象は5〜9月の入院・治療患者3182人で、氏名、カルテ番号、診療科、投与薬剤などが含まれていた可能性がある。社会保障番号と金融情報は含まれないという
  • 病院は当日に把握したが、患者への書面通知は10月22日だった。ツールの名前は明かしておらず、未許可のAIツールの制限と研修の強化を進めるとしている

出典:Pasquale Pillitteri / ジョンズ・ホプキンス、患者3182人のデータが未承認AIに流出と確認

サトシサトシ
攻撃ではなく職員が便利だからと貼り付けたケースです。院内で使ってよいAIを決めておかないと、日本の病院でも同じことは起きます

国内の導入:熊本は月約6,300回、長崎は月額1万6500円

導入する側から見ると、使われ方と値段の数字が出ました。熊本中央病院(361床)では記録・書類作成のAI基盤「Sail AI」の利用が職員229名に広がり、9月の実行回数は約6,300回、時間外労働は病棟(60床)で約70%減だとispecが発表しています。病院提供データに基づく企業側の発表です。長崎の春回会は会話からカルテを作る「SwiftSOAP」を9月に緩和ケアと在宅医療で本格運用しました。定額制で1ユーザー月額1万6500円です。こちらは記事に効果の数字が出ていません。

熊本中央病院(361床)で、記録・書類作成のAI基盤「Sail AI」の利用が職員229名・月間約6,300回に広がったとispecが発表。

  • 看護記録の音声入力から始め、現場が自作した「AI業務」が10部署・300件超で使われている
  • 2026年9月の実行回数は約6,300回で、3月から半年で約9倍。1人あたり月に約27回
  • 時間外労働は病棟(60床)で約70%減、地域医療連携室で約30%減とする。病院提供データに基づく企業側の発表

出典:株式会社ispec / 病院AXプラットフォーム「Sail AI」、熊本中央病院で月間約6,300回活用。実際に使われるAI業務は300件超に

サトシサトシ
薬剤科でも使われているそうで、マイナ薬剤情報の転記を医師事務が任せている例が気になりました。現場が自分で業務を作れる設計が効いているんですね。

長崎市の社会医療法人春回会が、会話から電子カルテを自動作成するAI「SwiftSOAP」を長崎県内で初めて導入したことについて、NEWSjpが報じました。

  • スマホで医師・看護師と患者の会話を文字起こしし、カルテを作る。5月から試用し、9月に緩和ケアと在宅医療部門で本格運用を始めた
  • 開発はパルシベイトで、定額制の1ユーザー月額1万6500円。春回会は井上病院など複数の病院を運営し、スタッフは900人以上
  • 法人側は記録作業の削減と、担当者だけが持っていた情報の共有を狙いに挙げている。効果の数字は記事中に出ていない

出典:NEWSjp / 医療法人春回会 カルテ作成にAI導入、長崎県内で初 作業減やサービス向上へ

サトシサトシ
緩和ケアと在宅から始めたのが現実的だと思います。面談や家族との会話が長い部門ほど、記録の手間が効いてきますから。

特に注目された10本

ニュース 医療の質・安全 注目 2026-11-01

医療関連会社マイシンのシステムへの不正ログインを受け、厚生労働省が医療機関などに安全対策の強化を求めたことについて、読売新聞が報じました。

  • 厚労省によると、マイシンのシステムに10月23日に不正ログインがあり、住所や氏名、処方箋の画像を含む87人分の個人情報が流出した可能性がある
  • 厚労省は医療機関と医療情報システムの運営業者に、パスワード管理の徹底やアクセスログの確認を求める通知を10月28日付で出した
  • 同省はパスワードに指紋やパスキーを組み合わせる多要素認証の活用を求めている

出典:読売新聞 / 厚労省、医療機関などにシステムの安全対策強化求める…医療関連会社で87人分の個人情報など流出の可能性

サトシサトシ
処方箋の画像が含まれるのは薬局側としても他人事ではないです。多要素認証、うちの編集部でもまだ全部のツールには入っていません。

EpicのAI返信下書きツールが、患者ポータルへの返信時間と時間外の返信にどう関わったかを調べた論文。

  • コロンビア大学アービング医療センターで、医師ら1542人の初回返信98万3154件を後ろ向きに解析した
  • ツール導入で全体の返信時間は8.6%延びた一方、ツールを使った返信では29.5%短縮した(いずれもP<.001)
  • 時間外の返信は全体では減らなかった(P=.46)。勤務時間外に届いたメッセージではむしろ4.52ポイント増えた

出典:JAMA Netw Open / AI-Generated Draft Response Tool, Message Turnaround Time, and After-Hours Replies Among Health Care Professionals.

サトシサトシ
下書きがあると返信のハードルが下がって、夜に届いた分まで返してしまう。負担が減るどころか形を変えるだけ、という結果は現場感に近いです。

熊本中央病院(361床)で、記録・書類作成のAI基盤「Sail AI」の利用が職員229名・月間約6,300回に広がったとispecが発表。

  • 看護記録の音声入力から始め、現場が自作した「AI業務」が10部署・300件超で使われている
  • 2026年9月の実行回数は約6,300回で、3月から半年で約9倍。1人あたり月に約27回
  • 時間外労働は病棟(60床)で約70%減、地域医療連携室で約30%減とする。病院提供データに基づく企業側の発表

出典:株式会社ispec / 病院AXプラットフォーム「Sail AI」、熊本中央病院で月間約6,300回活用。実際に使われるAI業務は300件超に

サトシサトシ
薬剤科でも使われているそうで、マイナ薬剤情報の転記を医師事務が任せている例が気になりました。現場が自分で業務を作れる設計が効いているんですね。

救急医がAIスクライブを使った診療録と使わなかった診療録を、電子カルテの監査ログで比べた論文。

  • 米国の20の救急部門で、指導医275人の記録を同じ医師の中で比較した。使用の有無は診療録内の同意文言から判定した
  • AI使用は全診療の31%。記録の作業時間は中央値10.0分対12.5分(調整後2.4分短縮)で、記録は約14%長く、書き始めは約15分遅かった
  • 記録の完了は遅れず、72時間以内の再受診も増えなかった(-0.8ポイント)。観察研究で、無作為化はしていない

出典:Ann Emerg Med / Ambient Artificial Intelligence Scribe Use and Objective Documentation Effort Among Emergency Physicians.

サトシサトシ
自己申告ではなく監査ログで測っているのがいいところです。書き始めが遅れても完了は遅れない、という点が現場の実感に近そうです。

クラウドドクターが、KDDIとOsaka Metroが駅構内に設ける個室ブースで、予約なしのオンライン診療を提供するという発表。

  • 御堂筋線北花田駅と四つ橋線西梅田駅で10月30日に開始し、天神橋筋六丁目駅は11月上旬から。診療は西梅田シティクリニックが担う
  • システム利用料は330円で、診療費は別途。診療は平日10時〜20時30分、土日10時〜17時30分(昼に休止あり)
  • 処方薬はブース内でオンライン服薬指導を受けて郵送するか、近隣薬局で対面受取を選ぶ。2026年4月の医療法改正で新設された受診施設の枠組みに触れている

出典:クラウドドクター / クラウドドクター、Osaka Metro駅構内の「診療・くらしの相談ブース Produced by KDDI」に参画

サトシサトシ
服薬指導までブースの中で済む設計なんですね。330円で通勤途中に受診できるなら、まず使うのは薬だけ切らした人かなと思います。
論文 生成AI・LLM 注目 2026-10-27

受診前に検査所見をAIで平易な要約にして患者へ渡すと、外来の診察や対話がどう変わるかを調べたNEJM AIのランダム化試験という論文。

  • ドイツの脳神経外科外来1施設で成人300人を1:1に割り付け、品質確認済みのAI要約を受診前に渡す群と通常診療群を比べた
  • 患者評価の医師患者関係スコアは4.42対4.25(P=0.005)。診察時間の中央値は25分対33分で、相対的に約21%短かった
  • 医師が自己評価した自律性支援はわずかに低下した。副次評価項目は多重比較の補正をしておらず、臨床転帰への影響は未検証

出典:★NEJM AI / Effect of Previsit AI-Generated Document Summaries on Consultation Time and Patient-Physician Communication - The AI-INFOCARE Randomized Controlled Trial.

サトシサトシ
要約を読んで来た患者さんとは、最初の説明を飛ばして相談から始められるのだと思います。8分の差は外来では大きいです

内閣府の検討会が、特定機能病院などに医療情報の提供を義務づける新制度の枠組みを取りまとめたことについて、社会保険研究所が報じました。

  • 検討会は10月9日に取りまとめた。特定機能病院や臨床研究中核病院は国の認定事業者への提供が義務、それ以外の医療機関は努力義務とする
  • 当初の対象は保険診療の電子カルテ情報と画像情報。事前通知は不要とし、本人が提供停止を求められる仕組みを設ける
  • 患者の識別には当面、被保険者番号を使う方向。政府は必要に応じて2027年の通常国会への法案提出をめざす

出典:社会保険研究所 / 医療データ利活用の新制度、大規模病院に情報提供を義務づけへ(2026年10月9日)

サトシサトシ
本人同意に頼らない収集は大きな転換です。広告・宣伝への利用禁止が明記された点は、メディア側としても気になります。

精神科向け医療AI「MENTRA」のWeb問診に、病院ごとの設問で初診の申し込みを電話とWeb問診に振り分け、精神保健福祉士の担当を自動で決める機能を加えたという発表。

  • 受診前の設問で、詳しい聞き取りが要る人だけを精神保健福祉士の電話へ案内し、ほかの人はそのままWeb問診へ進む仕組み
  • 振り分けは病院が決めた設問と答えの組み合わせだけで決まりAIは使わないとし、担当者は病院が決めた比率で割り振られるという
  • 同社の集計では、ある導入先の精神科病院1施設で利用職員が2名から18名、月の利用が9件から606件に増えたとしている

出典:株式会社MENTRA / 精神科の初診の予診を、病院ごとの設問でWeb問診と電話に振り分け。精神保健福祉士(PSW)の担当も自動で決まる機能をリリース

サトシサトシ
振り分けにAIを使わないと明言しているのが良いと思いました。なぜ電話に回ったのかを病院が説明できる設計は、精神科だと特に大事そうです。

NYU Langone HealthがOpenEvidenceの臨床AIを全施設の電子カルテEpicに組み込んだことについて、Fierce Healthcareが報じました。

  • 病院群、外来ネットワーク、Family Health Centersに加え、研修中の医師も対象になる。同システムは年間外来1200万件超、医師・教員6000人超を抱える
  • 医師は患者の記録を踏まえた臨床上の質問を自然言語で投げ、Epicの画面を離れずに文献に基づく回答を得られるとOpenEvidence側は説明している
  • 同社によると10月時点で米国の有資格臨床家120万人が利用し、10月だけで4500万回の相談があった

出典:Fierce Healthcare / NYU Langone brings OpenEvidence’s clinical AI into the EHR systemwide

サトシサトシ
単体アプリで広まったツールが、電子カルテの中に入っていく流れがはっきりしてきました。日本だとどのベンダーが最初にやるのか気になります。

電子カルテのデータで治験の候補患者を探すシステムが、実際の登録数を増やしたかをドイツの6大学病院で調べた論文。

  • MIRACUMコンソーシアムの29試験・814観察週で、導入前後を分割時系列解析で比べた
  • 統合解析では、導入直後の登録数の変化も導入後の傾きの変化も統計的に有意ではなかった
  • 効果は試験と診療科で大きくばらついた。適格基準のロジックは診断・年齢・受診歴が中心で、検査値はほとんど使えなかった

出典:★NPJ Digit Med / Platform evaluation and lessons learned with IT-supported patient recruitment.

サトシサトシ
スイッチを入れれば患者が集まる、とはいかないんですね。検査値が構造化されていないと条件が組めないのは、日本の病院でも同じ壁だと思います。

テーマの内訳

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