膵癌の治療・診断方針について、GPT-4と多職種腫瘍カンファの推奨を前向きに比べたパイロット研究。
- 2024年9月〜2025年3月に登録した45例のカンファ症例で、臨床データをGPT-4に入力し推奨の一致を評価した
- 全体の一致率は73.3%(κ=0.64)。転移例と術前治療例は90.0%、追加検査が要る例は50.0%で、文献の追加入力で改善しなかった
- 複雑な症例ほど不一致が多かった。著者は個別化や複雑な場面での限界から慎重な導入が必要としている
出典:Langenbecks Arch Surg / Concordance between GPT-4 and a multidisciplinary tumor board in pancreatic cancer: A prospective pilot study.
サトシ 文献を足しても一致率が上がらなかったのが面白い。情報を増やせば賢くなるわけではない。
急性大動脈解離の画像前トリアージに、LLMを組み込んだAIエージェントを使った多施設の後ろ向き研究。
- 中国3病院の疑い患者869例で内部検証、別の2病院200例で外部検証し、機械学習アンサンブルと比較した
- 機械学習は内部で精度0.948、外部で0.540に低下。エージェントは外部でもGPT-4oで精度0.710、F1 0.803と安定していた
- 症例濃縮デザインで数値が高めに出ており、外部特異度も低い。確定診断には使えず、除外補助にとどまる
出典:iScience / An LLM-enhanced AI agent for rapid diagnosis of acute aortic dissection in multi-center settings.
サトシ 内部で高い精度が外部で崩れる話は毎回出てきます。外部検証を入れているのは評価できます。
MedTech Groupが、訪問診療中に現場でAIへ確認できる「チャットHippo」の新ワークフローを提供開始したという発表。
- AIプラットフォーム「AI Hippo 医療Loop」上で、病名・薬剤・医療用語の確認、ガイドラインの参照と要約、訪問診療記録の補助ができる
- 疑問を帰院後に確認する流れから、現場でAIに確認して判断補助を得る流れに変える位置づけで、判断の不安軽減や診療スピード向上は同社が期待する効果
- 価格や導入施設数の記載はない。電子カルテの改修不要・30日以内の導入は同社の説明で、一部診療科からの導入も可能とされている
出典:MedTechGroup株式会社 / 一人で判断する不安へ。訪問診療中でもすぐ確認できるAI
サトシ 訪問先で一人のとき、調べ物を後回しにできる手段があるのは助かります。効果の数字はこれからです。
8種類の大規模言語モデルを216症例のシミュレーション環境で比較し、精度が同じでもコストや安全性に差があると分かったという論文。
- 8つのLLMを19診療科216症例・1728セッションのシミュレーション病院で検査や処置を発注させて評価した
- 精度93.5〜94.0%と近い3システムでもコストは最大1.75倍、医師の監督量は2.1倍の差があった
- 不要な侵襲的処置は8.7〜29.9%、失敗症例での無意味な侵襲的処置も最大18.1%発生していた
出典:J Am Med Inform Assoc / DiagnosticXchange: an open-source framework for evaluating safety, efficiency, and diagnostic reasoning in clinical AI systems.
サトシ 精度だけを比べても意味がない。同じ正解に辿り着くコストと安全性まで見て初めて実務で使えるかが分かる
270人の救急隊搬送例615枚の心電図でLLMのSTEMI判断精度を検証し、実用に耐えないと分かったという論文。
- 救急隊搬送270症例・615枚の心電図で3種のLLMとECG機械判読を実際のカテ室起動判断と比較した
- Geminiは感度95.3%と高いが特異度9.4%、ChatGPTとClaudeも感度67〜68%で機械判読の64.2%を下回った
- 偽陽性が多くカテ室の不要な起動を招く恐れがあり、汎用LLMは今の判断には向かないと結論づけた
出典:Heart Lung / Large language models fail to reliably predict emergent catheterization laboratory activation from prehospital electrocardiograms.
サトシ 感度が高いという見出しだけ見ると期待するが、特異度が9.4%では現場では使い物にならない典型例
肝胆膵がん107症例でLLM4種にカンファ判断を4回ずつ聞き、再現性と一致率を検証したという論文。
- 肝胆膵がんの単施設カンファ107症例を4つのLLMに同一条件で4回ずつ問い合わせ回答の揺れを調べた
- Gemini 3 Proは不一致率12.8%と安定していたがGPT-4oは30.2%とばらつき、カンファ一致率も48.6〜72.9%だった
- 外科手術が絡む判断ほどF1スコアが低く、再現性を確認しないと導入判断の材料にできないとした
出典:J Med Internet Res / Large Language Models in Multidisciplinary Decision-Making for Hepatopancreatobiliary Oncology: Retrospective Comparative Feasibility Study.
サトシ 同じ質問への答えが毎回違うようでは信頼できない。まず聞くべきは精度より先に安定性だと思う
術中迅速病理診断を支援するAIモデルCRISPを3,000例超の前向きコホートで検証したという論文。
- 10施設・15,000枚超の術中凍結切片を対象に、良悪性判定や転移検出など約100の診断課題でAIモデルCRISPの性能を検証した
- 前向きコホート3,000例超で、CRISPの判定は92.6%の症例で手術判断に直接反映され、協働診断で業務量を35%削減した
- 微小転移の検出精度は87.5%だった一方、約100課題の多くは後ろ向き解析での評価にとどまる
出典:Nat Med / A clinically-oriented foundation model for intraoperative pathology.
サトシ 術中診断で人の判断を助けて検査を減らせているのは、現場で使える形に近いです。運用設計まで書かれているのは珍しいですね。
NSCLC患者2,396人を対象に説明可能AIによる免疫療法選択支援ツールの臨床有用性を検証したという論文。
- 国際多施設のI3LUNG研究としてNSCLC患者2,396人の血液検査・CT・病理・ゲノムを統合したAIモデルを開発した
- 血液検査データのみのモデルはAUC最大0.77で、PD-L1やECOG PSなど既存指標を有意に上回った
- 説明可能AIツールの利用で専門医・非専門医とも予測精度が向上したが、多モーダル統合の上乗せ効果は検証・外部検証で確認できなかった
出典:Nat Med / Clinical usability of an explainable AI decision support tool and evaluation of multimodal models in NSCLC.
サトシ 大規模国際研究でAIが既存の臨床指標を上回ったのは大きい。多モーダル化の効果が確認できなかった点も正直に読める
ノルウェーの救急通報2,627件で通話内容とカルテ情報を統合したAIによる脳卒中判定モデルを検証したという論文。
- ベルゲンの救急指令センターの通報2,627件を対象に、通話の音声書き起こしと診療記録を統合したAIモデルを後ろ向きに検証した
- 脳卒中クラスのF1スコアは0.77で、オペレーター単独の基準0.73を上回り、AUCは0.86だった
- 通報30秒時点ではF1が0.68にとどまり、性能が安定するまで約90秒を要した。実装には大規模データでの外部検証が必要とした
出典:Int J Med Inform / Multimodal artificial intelligence-based decision support for stroke classification in medical emergency calls using call transcripts and patient health records: A retrospective diagnostic accuracy study.
サトシ 電話の音声だけで脳卒中を疑うのは相当難しい。数字で人間を上回ったのは面白いが、90秒待てるかは現場次第だ
肝細胞癌の治療方針について生成AIと肝胆膵MDTの一致度を検証した後ろ向き研究という論文。
- 2023年1月〜2025年2月にMDTで検討された肝細胞癌患者100例の匿名化サマリーをChatGPT-4に提示し、推奨を4段階の一致度で分類
- 治療手技まで一致する高一致度は81%(技術レベルの完全一致は53%)、低一致度は19%でp=0.001と高齢患者に多かった
- 不一致例の多くはMDTがより積極的な個別化治療を選んだケースで、単施設の後ろ向き解析という限界がある
出典:Ann Surg Oncol / Concordance Between a Generative Artificial Intelligence Model and a Hepatobiliary Multidisciplinary Team in Hepatocellular Carcinoma Management: A Retrospective Study.
サトシ 肝臓の治療方針は個別性が強いので、8割一致より残り2割の高齢患者をどう拾うかの方が現場の実感に近いです。
膠芽腫の再発予測から放射線治療計画を個別化するAI基盤PREDICT-GBMを、243例の多施設データで構築したという論文。
- 多施設で集めた膠芽腫243例の縦断データを使い、深層学習モデルと生物物理モデルの再発予測性能をガイドライン基準の照射野と比較検証した
- 深層学習モデル(U-Net)は将来の再発領域の79.37%をカバーし、ガイドライン基準の照射野を統計的に有意に上回った(p=2.9×10⁻⁵)
- 生物物理モデルGliODILも78.91%のカバー率を示し、プラットフォームとデータ・モデルはGitHubで公開されている
出典:★NPJ Digit Med / PREDICT-GBM: A multicenter platform advancing personalized glioblastoma radiotherapy planning.
サトシ 分野は違うけど、モデルとデータを公開して誰でも検証できるようにする姿勢はいいと思う。医療AIの再現性はまだ足りていない。
ケニアのプライマリケア施設で、EHR組み込み型の生成AI診療支援ツールの利用実態を調べたという論文。
- 16施設・25万件超の診療記録と、臨床スタッフ42人への面談・フォーカスグループを組み合わせた混合手法研究
- AI活用の診療は8カ月で利用率4%から47%まで上昇し、利用時の医師の評価は99.5%が肯定的だった
- 評価は高いが、対応が難しい複雑な症例ほど過信につながりかねない点が課題として指摘された
出典:BMJ Digit Health Ai / Mixed-methods evaluation of clinician experiences and adoption patterns of an EHR-integrated generative AI-based clinical decision support uptake by clinicians in Kenya.
サトシ 使うほど信頼が増すという話は良いニュースですが、複雑な症例での過信は日本でも起きそうな話です
脳卒中のガイドライン質問応答とリハビリ計画の下書き作成で、2種のLLMの出力を専門医が評価したという論文。
- 100問のガイドライン準拠質問で上位2モデルを選び、脳卒中患者60例分のリハビリ計画下書きを専門医3人が5段階で評価した
- リハビリ計画の生成ではChatGPT-o3が正確性・完全性・安全性を含む評価項目全てでDeepSeekを有意に上回った
- 単施設の専門医評価によるベンチマークで、著者らも臨床的有効性を示すものではないと明記している
出典:Digit Health / A two-stage evaluation of large language models for guideline-based Q&A and draft rehabilitation planning in stroke care.
サトシ リハビリ計画のたたき台をAIに作らせて医師が仕上げる形は、現場に合いそうな使い方だと思います。
MIMIC-IVのデータで、LLMの入院リスク予測にどのデータ種類が効くか検証したという論文。
- MIMIC-IV由来の入院2万2254件で、構造化EHRと画像・記録をLLMに与えて死亡・在院日数・退院診断を予測させ比較した
- 死亡予測はAUROC0.849、在院日数はAUROC0.868で、構造化EHR単独が最も高い性能だった
- 一方、退院診断・薬剤予測では画像・記録を加えた三種統合でF1が最大21.4%改善した
出典:J Am Med Inform Assoc / Less can be better: decomposing clinical data modalities in large language model-based healthcare applications.
サトシ 全部盛り込めばいいわけではないというのが実務的で好きです。記録支援を入れるならまず構造化データからだと思いました。
心電図によるOMI(急性冠閉塞)検出を専用AI・ChatGPT・Geminiと救急医で比較したという論文。
- 緊急冠動脈造影を受けた36例の12誘導心電図(OMI24例含む)を、専用AI・ChatGPT5.2・Gemini3Pro・救急医5名ずつが判定した後ろ向き診断精度研究
- 専用AIのAUROCは0.96(感度95.8%)で、救急専門医(感度66.7%、正解率75.0%)より有意に高感度だった(p=0.016)
- ChatGPTのAUCは0.81、GeminiのAUCは0.62(感度54.2%)にとどまり、繰り返し判定でも一致率が低かった(Fleissのκ0.24-0.49)
出典:BMC Emerg Med / ECG-based detection of occlusion myocardial infarction: a dedicated deep neural network versus multimodal large language models and physicians - a retrospective diagnostic accuracy study.
サトシ 救急のECG判定は専用AIの圧勝で、汎用LLMは同じ画像でも答えがぶれる。臨床に汎用LLMをそのまま使うのは危険だ
再発性尿路結石の食事指導で、ガイドライン組込み型LLMと標準LLMをin silico比較したという論文。
- 24時間蓄尿代謝評価を想定した合成症例30例を用い、専門家の基準と3人の評価者でLLMの出力を採点した
- ガイドライン組込み型は代謝特異性・遵守度・実行可能性のすべてで標準LLMより有意に高く(各P<.001)、安全性も100%対83.3%だった
- 実在の患者ではなく合成症例によるin silico評価であり、前向き臨床応用の検証はこれからとされている
出典:J Med Internet Res / Evaluating a Guideline-Integrated Clinical Interaction Framework Vs a Standard Large Language Model Interaction for Dietary Recommendations in Recurrent Urolithiasis: In Silico Study.
サトシ 結石の食事指導は個別性が肝で、ガイドラインに縛ったLLMの設計は理にかなっていると思います。
北京の病院データで自己免疫性肝疾患など3種の肝疾患をLLM埋め込みで鑑別する枠組みを検証したという論文。
- 2010〜2025年に北京佑安医院で治療を受けた肝疾患患者7,543人分の電子カルテデータを後ろ向きに解析した
- LLM埋め込みを統合したモデルは3疾患分類でマクロF1値0.835〜0.837と、通常の機械学習単独の0.791を上回った
- 対象は診断が重複しない明確な症例に限定されており、実臨床で多い診断の重なるケースでは精度が下がる可能性がある
出典:J Med Internet Res / Large Language Models for Heterogeneous Data Mining in Liver Disease: Framework Development and Retrospective Validation Study.
サトシ 自己免疫性肝疾患とDILIの鑑別は悩ましい場面が多いと聞きます。テキスト情報まで使う発想は現場に合っていそうです。
OpenEvidence生成のE-コンサル助言を内科教員医師が高評価し治療方針を変えたという論文。
- 米国の大規模学術医療センターで内科指導医44名に4つの臨床ビネットとAI生成のE-コンサル助言を提示し、作成者を人間かAIかで表示を無作為に変えて評価と方針採用を比較した
- 助言閲覧後にAI推奨方針を選ぶ割合が37.5%から81.8%に上昇し(オッズ比8.43、p<0.001)、評価も5点満点中4.2〜4.7と高評価だった
- 助言の作成者を「専門医」「AI」のどちらと表示しても評価や採用率に有意差はなく(p=0.70)、表示の有無は判断に影響しなかった
出典:J Gen Intern Med / Physician Ratings and Adoption of AI-Generated e-Consultation Advice: A Randomized Clinical Vignette Study.
サトシ AIと言われても専門医と言われても評価が変わらないのは、内容の質で判断している証拠かもしれません。表示義務の議論にも効きそうです。
重症喘息の生物学的製剤選択について、5種のLLMと多職種カンファレンスの判断を比較したという論文。
- 英国スコットランドの複数施設で、生物学的製剤未使用の重症喘息患者114人について多職種カンファレンスの決定とChatGPT等5種のLLMの推奨を比較した
- 多職種カンファレンスとLLMの一致度は低く(κ=0.143〜0.213)、LLM同士の一致度も弱〜中程度(κ=0.348〜0.586)にとどまった
- 全てのLLMで判断ミスが確認され、現時点では単独はもちろん補助的な意思決定者としても不向きと結論づけている
出典:J Allergy Clin Immunol Pract / Comparison of artificial intelligence and multidisciplinary team assessment for evaluating biologic decisions in severe uncontrolled asthma.
サトシ 一致率がこれだけ低いと補助にすら使いにくい。生成AIの得意領域と苦手領域の線引きがまた一つ見えた研究です。
緑内障手術の推奨をChatGPT・Copilot・Geminiの3つのLLMで比較検証したという論文。
- 実際の症例記録を単純・複雑の2群に分け、3つのLLMに緑内障手術の方針とその根拠を提示させた
- 複雑症例では特にGeminiで安全性リスクの評価が有意に上昇した(p=0.009)
- 単純例では実用的な回答だったが、複雑例では3モデルとも論拠の質が低下し補助的な位置づけにとどまるとした
出典:Semin Ophthalmol / Evaluation of Large Language Model-Generated Recommendations in Glaucoma Surgical Decision-Making.
サトシ 複雑な症例ほどAIの根拠が怪しくなるのは想像通りだ。単純な症例での安定こそ実装の入り口になる。
RAGを使うことで緑内障診療におけるLLMの臨床推論が改善するかを検証したという論文。
- 40件の実症例をシナリオ化し、GPT・Gemini・GrokをRAGありなしの計6条件で眼科専門医の回答と比較評価した
- RAG併用群は全モデルで評価が有意に向上し、GPTでは平均差0.119(95%CI 0.068-0.173)だった
- 評価者間の一致率は限定的で、AIと人間の比較解釈には慎重さが必要だとした
出典:Adv Ophthalmol Pract Res / Evaluating large language model clinical reasoning in glaucoma using retrieval-augmented generation.
サトシ RAGで良くなると言っても、採点する側の一致率が低いなら結論はまだ仮の段階だと思う。
心電図画像からAIでATTR-CM疑い例を絞り込み、多国籍コホートで検証したという論文。
- Yale New Haven Healthのデータでモデルを開発し、5つの多国籍コホートと3つのスクリーニングコホートで外部検証した
- 内部検証でのAUROCは0.84(感度0.72、特異度0.86)、外部コホートでは0.78から0.89の範囲だった
- AI心電図と心エコーを順に使うと陽性的中率は0.24から0.66に上がる一方、感度は0.84から0.68に下がった
出典:JAMA / Electrocardiogram-Based Deep Learning to Prioritize Testing for Transthyretin Amyloid Cardiomyopathy.
サトシ 見逃されがちな病気を心電図だけで拾えるのは魅力的です。感度と特異度のトレードオフは臨床導入の設計次第だと感じました
ChatGPTに腎臓内科コンサルト記録から血液透析の適応を判定させ、専門医と比較したという論文。
- 大学病院の腎臓内科コンサルト記録22例をChatGPT 5.4に判定させ、シニア腎臓内科医3名の合議および現場の判断と比較した
- 専門医合議との一致率は68.2%(κ=0.374)にとどまり、現場のフェロー判断との一致率81.8%(κ=0.633)より低かった
- 22例と小規模な単施設の探索的研究で、代謝性アシドーシスや溢水などの判断で医師との相違が目立った
出典:Front Med (Lausanne) / Evaluating the potential of ChatGPT as an educational decision-support tool for hemodialysis decision-making in nephrology training.
サトシ 専門医との一致が7割弱というのが正直な数字。腎臓内科は境界症例が多い領域なので、妥当なところだと思います。
肝胆膵外科のカンファレンス判断とAI(LLM)の治療提案の一致率を検証したギリシャの単施設研究という論文。
- アテネの大学病院で2025年7-12月にMDTで検討した肝胆膵症例の要約をLLM(Gemini)に入力し、MDT決定との一致率を後方視的に比較した
- 全体の一致率は91.7%(κ=0.841)だったが、判断が複雑な症例では62.5%(κ=0.304)まで低下した
- 単施設・後方視的研究であり、複雑症例でのAIとMDTの乖離は臨床的判断の個別性を反映するとしている
出典:HPB (Oxford) / Reliability of artificial intelligence in hepato-pancreato-biliary clinical decision-making: a retrospective comparative analysis with multidisciplinary team meetings.
サトシ 単純な症例で使えても複雑な症例で外れるというのは、むしろ実務での使い所を考える上で参考になります。
ドイツの心臓センターで、LLMパイプラインが医師記載の心血管リスクスコアの精度を上回ったという論文。
- 心房細動179例と大動脈弁狭窄76例の診療記録から6種のLLMに3つのリスクスコアを算出させ専門家判定と比較した後ろ向き研究
- 専門家判定との一致度はパイプライン0.78、医師0.39、単体LLM0.32で、数値の誤差もパイプラインが最小だった
- 対象はドイツの心臓センター1施設のみで、対象疾患も心房細動と重症大動脈弁狭窄の2病型に限られる後ろ向き研究
出典:Eur Heart J Digit Health / Development of an LLM pipeline exceeding physician-documented cardiovascular risk scores under routine clinical conditions.
サトシ スコア計算みたいな決定的な部分だけLLMに切り出す設計が賢いと思う。丸ごと任せるより再現性が出やすい。
電子カルテに統合したLLMベースのツールで、外科共同管理が必要な患者のトリアージを自動化できるか検証したという論文。
- スタンフォード大学で2025年9月から2026年2月にかけて、術前情報から外科共同管理の適否を判定するAIツールを医師レビュー付きで運用
- 6193症例のうち1582件(25.5%)がホスピタリスト紹介を推奨され、感度0.94・特異度0.74で医師の判断と一致した
- 医師判断との不一致の大半は運用や基準のばらつきによるもので、AIの誤分類が原因だったのは偽陰性19件中2件(11%)にとどまった
出典:JAMA Netw Open / An Electronic Health Record-Integrated, Large Language Model-Powered Tool to Triage Surgical Patients.
サトシ 感度0.94で見逃しを抑えつつ医師レビューを残す設計は、現場に導入する際の落としどころとして参考になります
AIによる自動データ収集と閉ループ型フィードバックで冠動脈疾患患者のLDLコレステロールと血圧管理を改善したという論文。
- 中国の単施設で冠動脈疾患患者1100人を、AI管理システム群と通常ケア群に1対1で無作為割付し3カ月間追跡した非盲検RCT
- 介入群のLDLコレステロールは対照群と比べ平均3.2mg/dL低く(p=0.03)、血圧目標達成率も45%対35%で有意に高かった
- HbA1c・BMI・服薬遵守率には有意差がなく、効果は脂質と血圧のコントロールに限られた
出典:BMC Med / Artificial intelligence-enhanced management system for secondary prevention of coronary heart disease: a randomized clinical trial.
サトシ 3カ月で数mg/dL差が出るのは悪くないけど、これが心血管イベント減少につながるかはまだわからない
骨盤リンパ節郭清の術中に血管・神経をAIが強調表示し、外科医36名の認識精度が有意に向上したという発表。
- 大腸外科・婦人科・泌尿器科の外科医36名が、骨盤リンパ節郭清の手術映像640本(0.5秒)を見て重要な血管・神経の有無を判定
- AIによる強調表示ありの条件で、外腸骨静脈15.8ポイント・尿管15.3ポイントなど4部位すべてで感度・特異度が統計学的に有意に改善
- 評価は模擬した短時間動画による認識試験にとどまり、実際の手術中での使用や合併症減少への効果は今後の検証課題
出典:株式会社Jmees / 骨盤リンパ節郭清を支援する手術AIの有用性を外科医36名で実証 ―国際医学誌「npj Digital Medicine」に研究成果を発表―
サトシ 認識精度が上がるのは良いけど、術者の判断がAI表示に引っ張られすぎないかも気になるところです
泌尿器科のキャンサーボードでChatGPT-4oの提案を106症例で前向きに評価したという論文。
- スペインの1施設で106件のカンファ症例(92人)を対象に、ChatGPT-4oの提案を7人の評価者が5段階で採点した
- 最終推奨の一致率は79.2%(95%CI 70.6-85.9)で事前設定の80%基準を下回り、有害となりうる誤りが4件(3.8%)あった
- ChatGPT-4oがカンファの決定を変えた例は0件で、要約や推論の支援に留まるとされた
出典:Clin Transl Oncol / ChatGPT-4o as a decision-support tool in a urological tumour board: a prospective evaluation.
サトシ 基準に届かなかった、が正しく報告されている点が大事。うまくいかない話ほど臨床実装の参考になる。
iPad一体型の歩行分析AI「SPLYZA Motion Medical」が一般医療機器(クラスI)の届出を完了したという発表。
- 専用端末のiPad1台でTUGテストや歩行・走行動作を3次元解析し、関節角度などの運動学的パラメーターを記録する製品として販売を開始した
- 撮影から解析まで最短1分で完了し、D250動作分析検査(250点)の算定に対応、月30名の利用で費用回収が見込めるとしている
- 解析は端末内で完結するローカル処理で、初回ログインとアップデート時のみインターネット接続が必要としている
出典:株式会社SPLYZA / スポーツ教育で培ったAI動作解析技術を医療へ。SPLYZA、歩行分析計として一般医療機器(クラスⅠ)の届出を完了
サトシ 算定点数と回収の目安まで出してくるのは導入判断がしやすいです。経営層への説明もこれなら組み立てやすい
パーキンソン病とiRBD患者のビデオ睡眠ポリグラフを深層学習モデルU-Sleepで自動ステージ判定したという論文。
- PD・iRBD・対照計339例の多施設データで微調整し、PD81例・iRBD36例・対照87例の臨床ホールドアウトで評価した
- 一致度を示すκ係数は微調整前0.60から微調整後0.64に改善し(p<0.001)、信頼度閾値の適用でREM検出の適合率は85%から95.6%に上昇した
- 施設ごとの追加微調整による上乗せ効果はわずかで、モデルの判定一致率が低い記録は人間同士の判定一致率も低かった
出典:★NPJ Digit Med / Fully-automated sleep staging for Parkinson's disease and isolated REM sleep behavior disorder.
サトシ 人間同士でも割れる記録はAIも割れる。κ0.64を人間並みと見るかは現場の基準次第だと思う
循環器領域のAI活用に関するRCT31件、170万人分をまとめたシステマティックレビュー・メタ解析という論文。
- 13地域のRCT31件(患者168万5717人)を対象に、画像ベースAI意思決定支援やAIモバイルヘルスなど複数の介入をCochrane手法で統合解析した
- 画像ベースAI意思決定支援は主要心血管イベントを有意に減らし(RR 0.74、95%CI 0.58-0.96)、AIモバイルヘルスは収縮期血圧を平均3.18mmHg下げた
- AI心電図は心不全検出への有意な効果を示さず(RR 1.22、95%CI 0.70-2.14)、エビデンスの確実性は全体に低〜非常に低いとしている
出典:EClinicalMedicine / Artificial intelligence in cardiovascular care: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials.
サトシ 効いたものと効かなかったものが同じ論文に並んでいるのが誠実だと思います。AI心電図は思ったより苦戦していますね
GPT-5に消化器腫瘍100症例で科ごとの役割を与え、腫瘍ボードとの判断一致率を検証したという論文。
- 5種類の役割プロンプトと専門家合議シミュレーションをGPT-5に適用し、消化器腫瘍100症例でMDT決定との一致率を比較した
- 一致率は78〜87%で枠組み間に有意差はなく、役割特有の言い回しは97〜100%出たが判断内容とは相関しなかった
- 多専門家による合議形式は出力の分散が大きかった一方、単一ロールの人格切り替えは言葉遣いの変化にとどまった
出典:★NPJ Digit Med / Role prompting modulates linguistic style but not clinical decision structure in GPT-5 tumour board simulation.
サトシ 同じGPT-5でも人格を変えると喋り方は変わるのに結論はほぼ一致するんですね。プロンプトで別人格を作った気になるのは危ういと思います。
医薬品情報サービスの質問にLLMが答えた内容を、薬剤師の回答と比較したという論文。
- タイの大学病院で実際に寄せられた102件の医薬品情報質問を7種のLLMに提示し、714件の回答を評価した
- 明確さは85〜93%、薬剤師回答との一致率は70〜86%だったが、引用の信頼性は3〜36%と一貫して低かった
- モデル間で有意差が出たのは一致率のみで、実務では薬剤師による確認が必要だとしている
出典:J Am Coll Clin Pharm / Large Language Models as Clinical Support Tools in Drug Information Services: Performance Comparison With Pharmacists.
サトシ 答えの質は悪くないのに出典が弱いのは危うい。引用まで検証できる仕組みが要る
診療ガイドラインの質問応答でRAGがLLMの回答精度をどれだけ改善するか検証したという論文。
- 口腔癌のドイツS3ガイドラインから作った50問を、RAG併用と非併用で6種のLLMに3回ずつ提示し評価した
- RAG併用でハルシネーション率は42%から4%に低下し、判定者に依存しない指標で正確性は0.64点上昇した
- 改善幅は元々弱いモデルほど大きく、専門家はRAG併用回答を98.5%の精度で見分けられた
出典:Diagnostics (Basel) / A Self-Controlled Benchmark of Retrieval-Augmented Generation for Large Language Models on Clinical Guideline Questions.
サトシ RAGが底上げする対象は弱いモデルだという整理は分かりやすい。強いモデルには効果が薄い
遊離皮弁の術後モニタリングに動画とマルチモーダルAIを使えるか検証したという論文。
- 遊離皮弁再建後の143例の動画を、形成外科医3名の合意評価とAI(Gemini 3 Flash)の判定で比較した
- 色調・緊張度・毛細血管再充満・臨床診断の4項目全てで有意な一致が得られた(κ0.49〜0.68、いずれもp<0.001)
- 単施設で臨床転帰との突合はなく、動脈不全例が少ないなど前向き検証前の限界があるとしている
出典:J Clin Med / The Gemini Eye in Microsurgery: Video-Based Capillary Refill and Chromatic Assessment for Free Flap Monitoring.
サトシ 補助的な安全網としての位置づけは妥当。主治医の判断を置き換える段階ではなさそう
救急ICUの診断で、専門特化型LLMと汎用LLM3種の正答率を比較したという論文。
- EICU患者184例を対象に、初期24時間分と入院全経過の2種類のデータで、集中治療医3名の合議診断と照合するレトロスペクティブ研究
- 最終診断の正答率は専門特化型Qiyuanが64.1%、GPT-5.1が59.2%、DeepSeek V3.1が57.1%、Qwen3-32Bが51.6%だった(P<.001)
- うまくいかなかった点として、全モデルの正答率が70%未満にとどまり、敗血症など疾患別の精度にもばらつきが見られた
出典:J Med Internet Res / Critical Care-Specific vs General-Purpose Large Language Models in Emergency Intensive Care Unit Diagnosis: Single-Center Retrospective Paired Comparative Study.
サトシ 専門特化しても汎用LLMと大差ない。結局どのモデルも7割に届かないという事実の方が大事だ
会話型LLMがめまい外来の問診を担当し診断一致率を前向きに検証したという論文。
- 中国5施設の外来患者176人に、看護師付き添いのタブレット型LLM問診エージェントで病歴聴取を行い専門医の最終診断と照合した
- 専門医の最終診断との一致率は79.55%(140/176例)で、良性発作性頭位めまい症では97.73%まで達した
- 静的な問診票を使った10種のLLMと専門医5人の比較では、どのLLMも専門医の多数決診断を有意には上回らなかった
出典:J Med Internet Res / Conversational Large Language Models for Vestibular Diagnosis in Outpatient Clinics: Prospective Multicenter Diagnostic Accuracy Study.
サトシ 問診という一番地味な作業をLLMに渡した実証。派手なAUCより、こういう泥臭い検証の方が現場に効く気がする
救急外来患者が日帰り対応可能かを予測する新しいツールを開発し既存指標と比較したという論文。
- 英国バーミンガムの3病院で成人の救急外来受診15万2877件のデータを使い、新しい予測ツールSDEC-Tを開発した
- 既存指標のAUROCが0.741と0.733だったのに対し、SDEC-TはAUROC0.850まで精度を上げた
- 内部検証にとどまり、他施設での外部検証はまだ行われていない
出典:BMJ Health Care Inform / Enhancing the accuracy of a multivariable prediction model to identify medical patients suitable for same day emergency care services.
サトシ AUROC0.85なら現場感覚に近い気がします。あとは自施設のデータでどこまで再現するかですね
12種のLLMにめまい症例の臨床判断をさせ、患者属性による推奨のばらつきを検証したという論文。
- TiTrATEなどの診断基準に基づく合成救急症例100件に33種の患者属性を組み合わせ、12種のLLMに各10回ずつ回答させ204万件を解析した
- 黒人のトランスジェンダー女性という設定では精神科紹介の推奨が中立条件より12.2ポイント低く、ホームレス状態の黒人患者でも9.1ポイント低かった
- 合成症例による机上検証であり、実診療下でのバイアスの大きさやその臨床的影響までは確認していない
出典:J Vestib Res / Sociodemographic bias in LLMs' clinical decision-making for dizziness.
サトシ LLMに医療判断を任せる怖さがここにある。属性で答えが変わるなら、それはブラックボックスだ。使うなら人間が疑う前提で使う。
説明付きAIによる皮膚科診断支援が、一般人と医師で正反対の効果を示したという論文。
- 一般人623人とかかりつけ医153人を対象に、AIの診断説明が判断に与える影響を比較実験で検証した
- 一般人はAIが正しい時は精度が上がり誤った時は下がる自動化バイアスを示したが、医師は正誤に関わらず精度が向上した
- AIの診断結果を先に提示すると、より強いアンカリングバイアスが生じることも確認された
出典:Nat Med / Divergent impacts of explainable AI for dermatological diagnosis on clinicians versus lay people.
サトシ 説明があれば安心というのは素人の発想で、経験を積むと表示のされ方に振り回されなくなるのが面白い。
LLMで臨床記録を解析し敗血症アラートを強化するCOMPOSER-LLMを、救急部門で実運用評価した論文。
- 大規模病院の救急部門2施設で、LLMが看護記録を解析して敗血症リスクのアラートに文脈情報を付与するシステムを導入した
- 導入後、アラートが「感染疑いなし」として却下される割合は事前の傾向から予測される水準より有意に低下した
- 経験5年未満の看護師は経験豊富な看護師よりもアラート後に感染を疑う傾向が強く、経験差による受け止め方の違いも見られた
出典:Npj Health Syst / Improving sepsis best practice utility and clinical acceptance using an LLM-enhanced prediction system.
サトシ アラート疲れが問題になる現場で、根拠を添えるだけで受け止め方が変わるのは実装のヒントになる。
肺炎入院患者への抗菌薬選択と用量提案をLLMで支援するパイプラインを開発した中国の多施設研究。
- 中国2施設の肺炎入院患者331人(開発233人、外部検証98人)の電子カルテを用い、検索拡張とルール制約を組み合わせたLLMパイプラインを構築した
- 外部検証セットでの抗菌薬選択のF1スコアは0.86、用量提案まで含めた一致率(Jaccard)は0.85だった
- DeepSeek-V3、GLM-4.6、GPT-4oを比較し、根拠と適用ルールを提示して医師が確認できる設計にした
出典:JMIR Med Inform / Large Language Model-Based Clinical Decision Support for Antibiotic Selection and Dose Recommendation in Hospitalized Patients With Pneumonia: Multicenter Retrospective Study.
サトシ ハルシネーション対策にルールと根拠提示を組み込む発想が、そのまま現場導入の条件になっている。
GPT-5-miniに小児救急のトリアージ優先度を判定させ、精度を検証した論文。
- 小児救急22万8104件の受診記録から2件ずつ組み合わせ、どちらの緊急度が高いかをLLMに判定させた
- 全体の正答率は0.73で、緊急度の差が大きい組み合わせほど正答率は上がった
- 緊急度が高い方が年長児の場合や年齢差が大きい場合は正答率が下がり、人と同様に年少児を優先する傾向が見られた
出典:Npj Health Syst / Assessing acuity in pediatric emergency department triage: performance of a large language model.
サトシ 数字が同じ0.73でも、年齢バイアスの中身を見ないと現場では使えないという話。