2026年9月10日(木)の Dose

10本(論文7・リリース3)

論文 画像診断AI 注目

自動AIによる糖尿病網膜症の現場スクリーニングを、専門家による読影センターの判定と比較した3件の前向き検証研究という論文。

  • 2種のFDA承認済み網膜カメラを用い、1200人超の未診断糖尿病患者を対象に3つの前向き臨床試験を実施した
  • 感度は92〜93%、特異度は89〜94%で、読影センターの多専門家判定と高い一致を示した
  • 撮影成功率は99%超、機器間・検者間の再現性も95〜99%と高く、現場導入に適した性能を示した

出典:Front Digit Health / Autonomous AI-driven point-of-care screening for diabetic retinopathy compared to reading center multi-expert clinical review: results from three prospective controlled pivotal validation studies with AEYE-DS in over 1,200 patients.

サトシサトシ
糖尿病網膜症のスクリーニングを現場で完結できるなら、紹介までの時間が短縮されそうで気になります

AIコーチング機能付き高血圧管理アプリの利用者と非利用者をマッチングし、血圧変化を比較したという論文。

  • 米国の大規模医療システムで、高血圧患者425人のアプリ利用者と425人の通常ケア群を1対1でマッチングした後ろ向きコホート研究
  • アプリ利用者は収縮期血圧が平均4.6mmHg低下し、通常ケア群の1.6mmHgより有意に大きく低下した(p=0.003)
  • 重症の高血圧患者では効果が大きかった一方、単一医療システムでの後ろ向き研究のため因果関係の証明は難しい

出典:J Gen Intern Med / Association of an AI-Enabled Gamified Mobile Health App on Blood Pressure Outcomes in a Matched Cohort.

サトシサトシ
アプリで血圧が下がるという結果は面白いですが、通常診療でも同じくらい丁寧に関わればどうなるか気になります

AIによる診察音声要約(スクライブ)の精度が、環境音やマイクの位置でどう変化するかを調べたという論文。

  • 模擬プライマリケア診察を録音し、マイク種類・距離、背景音、無関係な会話の3種類のノイズで精度を比較した
  • マイクから4.5m離れると全ての機種で内容がすべて欠落し、2m以内では欠落は5件未満に収まった
  • 幼児の声や強い雨音など特定の背景音は欠落を増やす一方、無関係な会話(情報ノイズ)には強かった

出典:BMJ Digit Health Ai / Impact of acoustic and informational noise on AI-generated clinical summaries.

サトシサトシ
マイクの位置一つで精度が変わるなら、スクライブ導入は機材選びも含めて丁寧にやる必要がありますね
論文 臨床意思決定支援 注目

ケニアのプライマリケア施設で、EHR組み込み型の生成AI診療支援ツールの利用実態を調べたという論文。

  • 16施設・25万件超の診療記録と、臨床スタッフ42人への面談・フォーカスグループを組み合わせた混合手法研究
  • AI活用の診療は8カ月で利用率4%から47%まで上昇し、利用時の医師の評価は99.5%が肯定的だった
  • 評価は高いが、対応が難しい複雑な症例ほど過信につながりかねない点が課題として指摘された

出典:BMJ Digit Health Ai / Mixed-methods evaluation of clinician experiences and adoption patterns of an EHR-integrated generative AI-based clinical decision support uptake by clinicians in Kenya.

サトシサトシ
使うほど信頼が増すという話は良いニュースですが、複雑な症例での過信は日本でも起きそうな話です
論文 生成AI・LLM 注目

韓国のがん患者インタビューで、複数のLLMによる精神的苦痛の評価が専門医の評価とどれだけ一致するか調べたという論文。

  • がん患者101人の面談記録3931項目を、GPT-4o・Claude 3.5・Gemini 2.5の3モデルで評価した
  • 専門医との一致度(ICC)は0.82〜0.87と高かったが、Claude 3.5とGemini 2.5は苦痛スコアを有意に高く見積もった(補正後P<.001、P=.002)
  • モデルの説明が発言内容を超えて解釈を広げるほど、判定の誤差が大きくなる傾向が見られた

出典:J Med Internet Res / Large Language Models for Distress Rating in Korean Psycho-Oncology Interviews: Exploratory Clinician-Benchmarked Evaluation Study.

サトシサトシ
一致率は高くても模型ごとに間違え方が違うのは、LLMを一つに絞る危険性を感じさせます
論文 生成AI・LLM 注目

スイスの病院で、院内で動かせる小型オープンソースLLM6種を実際の診療データで評価したという論文。

  • 8B〜24Bパラメータの6モデルを、フランス語の退院時サマリーや診療録など実データで7つの臨床タスクに適用した
  • 単純な検索タスクではLlama3.1がF1スコア99.81%を達成した一方、個人情報検出は最良でもF1が0.33〜0.34にとどまった
  • 退院サマリー要約の質は全モデルで低く、あるモデルは臨床医評価で55%の出力に幻覚(誤情報)が見つかった

出典:J Med Internet Res / "Small" Large Language Models in the Hospital: Evaluation Study on Real-World Data in a Resource-Constrained Setting.

サトシサトシ
簡単な検索はできても要約や意思決定支援は使い物にならないというのは、身の丈に合ったLLM選びの参考になります

FDAのサイバーセキュリティ規制強化後、AI搭載医療機器の承認期間がどう変わったか分析したという論文。

  • 2000年〜2026年の510(k)承認記録8万3675件を対象に、AI搭載機器とそれ以外を比較する差分の差分分析を行った
  • 規制強化後、市場全体では承認期間に有意な変化がなかったが、AI搭載機器では約24%長期化した(p<0.001)
  • 遅延は画像診断・放射線治療計画分野の5コードに集中しており、AI機器全般ではなく特定分野の規制対応に起因する可能性が高い

出典:J Imaging Inform Med / Networked Radiology Imaging and Treatment Planning Systems and FDA Cybersecurity Regulation: A Difference-in-Differences Analysis of 510(k) Clearance Delays.

サトシサトシ
規制対応の負担が特定分野に偏るなら、AI医療機器の実装コストは分野ごとに変わってきそうです
リリース 予測モデル・リスク層別 注目

TOPPANが東京大学医学部附属病院と、更年期女性の健康リスクをAIで予測するモデル開発の共同研究を始めたという発表。

  • 自社の医療データサービスが持つ約2万例のリアルワールドデータを使い、周閉経期の検査値変化を分析する
  • 研究期間は2028年3月までで、東大病院が研究デザインと医学的検証を、TOPPANがデータ解析を担当する
  • 共同研究の段階であり、リスク予測モデルの実用化や精度についてはこれからの検証次第だとしている

出典:TOPPANホールディングス株式会社 / TOPPAN、東京大学とAIによる女性の健康リスク予測に関する共同研究を開始

サトシサトシ
更年期の検査値変化をAIで捉える試みは面白いですが、実用化までは道のりが長そうです
リリース その他

医療従事者向けの情報共有クラウド「Medteria」を運営するメドテリアが、総額1.4億円の資金調達を実施したという発表。

  • 第三者割当増資1億円と日本政策金融公庫の資本性ローン4000万円を合わせ、総額1.4億円を調達した
  • 医療従事者・医療系学生約6万人が利用するサービスの機能開発と、法人向け事業の強化に資金を充てるとしている
  • 累計調達額は2.4億円となり、事業の詳細な収益状況や利用実績の推移は公表されていない

出典:メドテリア株式会社 / メドテリア、1.4億円の資金調達を実施。6万人が利用する医療コミュニケーションクラウド「Medteria」の事業拡大を加速

サトシサトシ
医療従事者コミュニティを軸に採用や広告に広げるモデルは、規模が出るかどうかが本当の勝負だと思います

がんゲノム医療のエキスパートパネルを支援するプログラム医療機器について、テンクーが製造販売承認を申請したという発表。

  • 2023年に厚労省の優先審査対象品目に指定されたプログラムで、2026年9月8日に承認申請を行った
  • 対象となるがんゲノムプロファイリング検査は、2019年の保険適用開始から累計14万1241人が受検している
  • 現時点では未承認の医療機器であり、申請は承認取得を保証するものではないと自社が注記している

出典: テンクー / テンクー、がんゲノム医療のエキスパートパネルを支援するプログラム医療機器の製造販売承認を申請

サトシサトシ
承認申請の段階でニュースになるのは、がんゲノム領域でのSaMD周りの競争が活発だからでしょう