2026年8月29日(土)の Dose

10本(論文7・リリース3)

TAVI後の長期死亡をマルチモーダルAIで予測し、スイスと日本の2施設で外部検証したという論文。

  • 2014年から2023年にTAVIを受けた患者3991例(開発2985例、外部検証1006例)の多モーダルデータでAIモデルを開発した
  • 外部検証でのC-indexは全死亡予測0.712、心血管死予測0.776で、従来のSTS-PROMなどのリスクスコアを上回った
  • 外部検証は日本の1施設(1006例)のみで行われた、後ろ向きコホートでの検証にとどまる

出典:Lancet Digit Health / Multimodal artificial intelligence-based long-term mortality prediction after transcatheter aortic valve implantation: a multicentre development, validation, and testing study.

サトシサトシ
外部検証が日本1施設だけなのが気になる。C-index0.71は「使える」というより「まだ研究段階」の数字だと僕は思う
論文 臨床意思決定支援 注目

心電図画像からAIでATTR-CM疑い例を絞り込み、多国籍コホートで検証したという論文。

  • Yale New Haven Healthのデータでモデルを開発し、5つの多国籍コホートと3つのスクリーニングコホートで外部検証した
  • 内部検証でのAUROCは0.84(感度0.72、特異度0.86)、外部コホートでは0.78から0.89の範囲だった
  • AI心電図と心エコーを順に使うと陽性的中率は0.24から0.66に上がる一方、感度は0.84から0.68に下がった

出典:JAMA / Electrocardiogram-Based Deep Learning to Prioritize Testing for Transthyretin Amyloid Cardiomyopathy.

サトシサトシ
見逃されがちな病気を心電図だけで拾えるのは魅力的です。感度と特異度のトレードオフは臨床導入の設計次第だと感じました
リリース 電子カルテ・記録業務 注目

精神科向け医療AI「MENTRA」が記録業務の実測効果を公開し、無料トライアルを開始するという発表。

  • MENTRAは、精神科病院での2026年2月から8月の6カ月間に、会話1356件・190.1時間分を記録の下書きにしたと発表した
  • 下書きが届くまでの中央値は18秒、下書きの96.7%が医療者の確認・修正を経て正式な記録として採用されたという
  • 手書き想定(1件8分)との比較で診察記録だけで約135時間の削減と試算する。トライアルは2026年10月31日申込分まで1カ月間無料

出典:株式会社MENTRA / 精神科病院やメンタルクリニックの業務をラクにする医療AIサービス「MENTRA」、医療機関向けに期間限定の無料トライアルを開始

サトシサトシ
書く仕事を減らす具体的な数字が出ているのはいい。ただし自社集計なので、第三者の検証も見てみたいです
リリース 電子カルテ・記録業務 注目

医療・介護文書をAI-OCRで構造化データに変換する機能を共同開発し、商用提供を始めるという発表。

  • United Vision & Companyとアイ・エス・ビーが、医療介護連携基盤「Pubcare Pro」向けにAI-OCR機能を開発し2026年8月28日に商用提供を開始した
  • 診療情報提供書や訪問看護指示書など多様な帳票に対応し、認識精度は95%以上を安定して確保しているという
  • 現場ヒアリングでは1文書の確認・入力に従来30分から1時間を要していたとしており、転記業務の削減を狙う

出典:株式会社United Vision & Company / 株式会社United Vision & Companyと株式会社アイ・エス・ビー、 医療文書を構造化データへ変換する 「Pubcare Pro AI-OCR 機能」を共同開発、商用提供を開始

サトシサトシ
紙とFAXが残る医療現場の構造そのものへの投資という感じがする。精度95%は自己申告なので実測が見たい
論文 医療の質・安全 注目

小児血液腫瘍科でルールベースのデジタル管理基盤AMITを導入し、臨床アウトカムへの影響を検証したという論文。

  • 2022年に開発し2023年第4四半期に小児腫瘍デイケア病棟へ導入、5つの院内ITシステムを統合して安全性と診療動線を評価した
  • 導入後、緊急PICU紹介は78%減少、3時間以内の抗菌薬投与は47%改善、電解質・輸血の待ち時間は104分から44分に短縮した
  • 61件の安全事象(うち生命に関わりうる事例2件)を検出した一方、対照群を置かない単施設の前後比較にとどまる

出典:J Pediatr Hematol Oncol / Implementation of a Digital Clinical Management Platform in a Tertiary Pediatric Hemato-Oncology Center: Impact on Clinical Outcomes and Patient Safety.

サトシサトシ
点数だけじゃなく安全事象を61件拾えたのが大きい。前後比較なのは気になるけど、現場感覚だと納得できる数字です

標準化された脳神経放射線レポートをAIで平易な言葉に書き換え、患者の評価を比較したという論文。

  • 成人100人を無作為に割り付け、放射線科医2名が確認したAI簡易版と通常の専門用語版レポートを読んでもらい5段階で評価させた
  • 全項目でAI簡易版の評価が有意に高く(すべてp<0.001)、効果量は総合印象でd=2.10、信頼のトーンでd=1.31だった
  • 客観的な理解度テストは行っておらず、単一症例のレポートのみで検証した結果である

出典:Insights Imaging / Perceived communication quality of a standardized neuroradiology report following AI-based simplification: a randomized, blinded study.

サトシサトシ
患者の満足度が上がるのは当然だと思う。「分かりやすい」と「正しく理解できた」は別物で、混同しない方がいい
論文 臨床意思決定支援 注目

ChatGPTに腎臓内科コンサルト記録から血液透析の適応を判定させ、専門医と比較したという論文。

  • 大学病院の腎臓内科コンサルト記録22例をChatGPT 5.4に判定させ、シニア腎臓内科医3名の合議および現場の判断と比較した
  • 専門医合議との一致率は68.2%(κ=0.374)にとどまり、現場のフェロー判断との一致率81.8%(κ=0.633)より低かった
  • 22例と小規模な単施設の探索的研究で、代謝性アシドーシスや溢水などの判断で医師との相違が目立った

出典:Front Med (Lausanne) / Evaluating the potential of ChatGPT as an educational decision-support tool for hemodialysis decision-making in nephrology training.

サトシサトシ
専門医との一致が7割弱というのが正直な数字。腎臓内科は境界症例が多い領域なので、妥当なところだと思います。

CAR-T療法後の有害事象をGPT-4にカルテ記載から抽出させ、精度を評価したという論文。

  • UCSFで2012年から2023年の患者293例、進行記録4762件を対象に、ゼロショットのGPT-4-0314でCRSやICANS等を抽出した
  • CRSとICANSの重症度判定はそれぞれ正解率0.97、0.91と高かったが、あらかじめ定めた有害事象の抽出は正解率0.62から0.76にとどまった
  • 日付や対応処置の抽出は一致度が中程度で、幅広い有害事象属性の抽出は精度が安定しなかった

出典:PLOS Digit Health / Extracting adverse event nature, severity, timelines and resulting interventions from clinical notes of patients receiving CAR-T cell therapy using large language models.

サトシサトシ
CRSとICANSは精度が高い一方、それ以外の有害事象は精度がばらつく。使う項目を絞れば実務に使えそうです
リリース 電子カルテ・記録業務 注目

京都の病院がリハビリ評価を院内iPhoneで行うアプリを独自に構築し、本格導入したという発表。

  • 蘇生会総合病院は約50台の院内iPhoneを使い、BBSやTUGなど各種リハビリ評価を実施・記録するアプリを開発、7月のテストを経て8月に本格導入した
  • 運用開始から約半月で350件を超える評価が蓄積され、義務化せずスタッフが自発的に使う形で定着が進んでいるという
  • 評価結果は診療記録用テキストとして出力できるが電子カルテへの自動登録はせず、最終確認は評価者が行う運用としている

出典:医療法人社団蘇生会 / 「現場の課題」から生まれた医療DX 蘇生会総合病院リハビリテーション科、院内iPhoneを活用したリハビリ評価システムを独自に構築

サトシサトシ
現場発というのがいい。義務化せず自発的に使われているのが、定着する仕組みの証拠だと思います
論文 その他

知識グラフでEHRから多発性硬化症患者を同定し、治療薬の処方トレンドを解析したという論文。

  • 2つの医療システムの2004年から2022年のEHRデータから教師なしの表現型判定アルゴリズムで患者を同定し、計29169人を解析した
  • 表現型判定の精度はAUROC0.994と0.922、B細胞除去療法の処方は2018年以降増加傾向(傾き0.051、p=0.001)を示した
  • 多発性硬化症という一分野のデータであり、処方パターンの解析にとどまり臨床アウトカムの評価は行っていない

出典:PLOS Digit Health / Knowledge graph-guided multiple sclerosis identification and therapeutic trend analysis: Real-world evidence from two large healthcare systems.

サトシサトシ
個々の患者より処方トレンドを俯瞰する使い方としてのAIは面白い。ただ神経内科という狭い領域の話ではある