2026年8月11日(火)の Dose

10本(論文8・リリース2)

論文 臨床意思決定支援 注目

会話型LLMがめまい外来の問診を担当し診断一致率を前向きに検証したという論文。

  • 中国5施設の外来患者176人に、看護師付き添いのタブレット型LLM問診エージェントで病歴聴取を行い専門医の最終診断と照合した
  • 専門医の最終診断との一致率は79.55%(140/176例)で、良性発作性頭位めまい症では97.73%まで達した
  • 静的な問診票を使った10種のLLMと専門医5人の比較では、どのLLMも専門医の多数決診断を有意には上回らなかった

出典:J Med Internet Res / Conversational Large Language Models for Vestibular Diagnosis in Outpatient Clinics: Prospective Multicenter Diagnostic Accuracy Study.

サトシサトシ
問診という一番地味な作業をLLMに渡した実証。派手なAUCより、こういう泥臭い検証の方が現場に効く気がする
論文 画像診断AI 注目

眼底写真から2〜5年後の緑内障進行を予測するAIモデルを5カ国のデータで外部検証したという論文。

  • 6施設の緑内障外来患者1万3913人、眼底写真16万枚超のデータでモデルを開発し、5カ国のコホートで外部検証した
  • 内部検証でのAUCは最大0.98だったのに対し、5カ国での外部検証ではAUCが0.74〜0.86まで下がった
  • 外部検証での精度低下を踏まえ、著者らはリスク層別や資源配分への活用には前向き評価が必要だとしている

出典:Lancet Digit Health / Prediction of structural glaucoma progression from baseline fundus photographs using deep learning: a retrospective multicentre study.

サトシサトシ
内部0.98が外部で0.74まで落ちる。この差こそが臨床AIの本当の実力で、そこを隠さず出したのは誠実だと思う

看護主導のAIスクライブ導入前後でインシデント報告書の完成度を比較したという論文。

  • シンガポールの大学病院で、転倒と与薬関連のインシデント報告書を導入前75件、導入後75件で比較した
  • WHO準拠の完成度スコアは導入前11.81点から導入後13.61点に上昇し、補正後の差は1.95点だった(P<0.001)
  • AIスクライブの利用は任意で、導入後も対象報告書の約40%にしか使われておらず、利用者の自己選択による差の可能性が残る

出典:JMIR Nurs / Nurse-Led Ambient AI Scribe for Patient Safety Incident Investigation Reports (Project NARRATE): Retrospective Pre-Post Comparative Document-Quality Study.

サトシサトシ
インシデント報告書、正直みんな適当に書きがちです。ここが底上げされるなら現場としてはありがたいです
論文 生成AI・LLM 注目

電子カルテから薬剤用量を抽出する精度を5種のLLMで比較したという論文。

  • 9つの薬効分類にまたがる薬剤4295件の用量を手作業で注釈し、5種のLLMにプロンプトを与えて抽出精度を比較した
  • Claude 3.5 SonnetがR2 99.32%、正解率92.36%で最高性能となり、プロンプト改善後はR2 99.34%まで伸びた
  • 一方でモデル間の一致度は中程度(級内相関0.73)にとどまり、性能差はプロンプトへのモデルごとの反応の違いによるところが大きいとしている

出典:Clin Pharmacol Ther / Prompt Engineering of Large Language Models for Medication Dose Calculation.

サトシサトシ
薬剤の用量抽出みたいな地味な作業ほどLLMが効きそうです。ただモデルで結構差が出るのは知っておきたいです
論文 臨床意思決定支援 注目

救急外来患者が日帰り対応可能かを予測する新しいツールを開発し既存指標と比較したという論文。

  • 英国バーミンガムの3病院で成人の救急外来受診15万2877件のデータを使い、新しい予測ツールSDEC-Tを開発した
  • 既存指標のAUROCが0.741と0.733だったのに対し、SDEC-TはAUROC0.850まで精度を上げた
  • 内部検証にとどまり、他施設での外部検証はまだ行われていない

出典:BMJ Health Care Inform / Enhancing the accuracy of a multivariable prediction model to identify medical patients suitable for same day emergency care services.

サトシサトシ
AUROC0.85なら現場感覚に近い気がします。あとは自施設のデータでどこまで再現するかですね

GPT-4oが精神科診療録からうつ病の重症度スコアを推定できるかを検証したという論文。

  • 米国の精神科診療録77件を精神科医3人が独立して重症度評価し、その一致度とLLMの推定結果を比較した
  • 精神科医同士の一致度がκ0.77〜0.78だったのに対し、GPT-4oのゼロショット推定はκ0.85で人間の一致度を上回った
  • オープンソースのLlama-4はκ0.70にとどまり、モデルによって性能差が大きく出た

出典:JMIR Form Res / Measuring Depression Severity With Clinical Global Impression-Severity Scale Scores From Clinical Notes Using Large Language Models: Validation Study.

サトシサトシ
人間同士の一致より機械の方が高いというのは面白い。ただこれは診療録が良く書けている前提の話だと思う
論文 医療の質・安全 注目

肺がん検診の受診率を上げる2種類の介入をRCTで比較したという論文。

  • 米国の医療システムで肺がん検診を受けた1837人を4群に割り付け、患者向け啓発とオーダー保留型のリマインダーの効果を比較した
  • リマインダー介入群は受診率が47.4%から75.5%に上がった一方、啓発介入群はかえって63.3%から59.2%に下がった(P=0.04)
  • 啓発介入が受診率を下げた理由は本論文だけでは分からず、追加の検討が必要な結果として報告されている

出典:JAMA Intern Med / Health Communication and Stepped Reminders Interventions for Lung Cancer Screening: A Randomized Clinical Trial.

サトシサトシ
良かれと思って作った啓発資材が受診率を下げる。この手の逆効果こそ、うまくいった話より学びが多い

佐渡島の皮膚科閉院を受け内科医院を拠点にオンライン診療体制を構築したという発表。

  • 佐渡市の内科医院が診療時間外に診察室を開放し、島外の皮膚科医とテレプレゼンスシステムでつなぐ体制を2026年8月3日に開始した
  • 島内唯一だった皮膚科開業医が2026年7月末に閉院したことを受けた対応で、看護師が付き添い調剤薬局も服薬支援で連携する
  • 重症例や判断が難しい患者は基幹病院に紹介するトリアージを前提とした、地域医療を置き換えない補完的な位置づけの取り組みとされる

出典:クラウドドクター / クラウドドクター、「来院型オンライン診療」で、離島の医療アクセス維持に協力

サトシサトシ
閉院した分をまるごとオンラインで埋めようとせず、トリアージ前提にしているのが現実的だと思います

受診直前に届く自動案内が事前指示書の作成につながるかを検証したという論文。

  • 3つの医療システム50施設のプライマリケア患者5810人を対象に、受診7〜21日前に届く自動案内の有無で比較した
  • 受診前案内を受けた群は24カ月後の事前指示書作成率が16.7%となり、受けなかった群の9.8%を上回った(補正差6.5ポイント)
  • ACPに関する話し合いの記録も40.2%対27.5%で受診前案内群の方が多く残っていた

出典:JAMA Netw Open / Timing Prompts for Advance Care Planning Discussions and Advance Directive Completion.

サトシサトシ
タイミングだけでこんなに変わるんですね。受診の直前に案内が届くという設計、産業医面談にも応用できそうです
リリース その他

看護師の振り返りをAIが支援するアプリの開発資金を地方銀行から調達したという発表。

  • 2026年1月にApp StoreとGoogle Playで公開した看護師支援AIアプリ「マイプリ」の機能開発と現場実証に、十六銀行からの融資を充てる
  • 運営元は個別伴走支援を通じてこれまでに延べ400名以上の看護師から相談を受け、70名以上に継続的な1on1支援を提供してきたとしている
  • 調達額は公表されておらず、資金は開発体制と運用体制の強化に充てるとされている

出典:株式会社ナースX / 株式会社ナースX、看護師支援AI「マイプリ」の社会実装に向け、十六銀行より資金調達

サトシサトシ
看護師が辞める前に相談できる場所、これ意外とちゃんと無いんですよね。地銀が伴走してるのも良いと思います