週刊Dose 2026年8月24日〜30日

3日分 / 全28本(論文21・リリース7)

サトシ

サトシの総括

医療DXエバンジェリスト/薬剤師

一致率91.7%でも、複雑な症例では62.5%に落ちる

28本を取り上げました。論文21本、プレスリリース7本です。お盆明けで本数は前週の50本から減りましたが、記録業務が9本と軸は変わりませんでした。

平均の一致率は、難しい症例を隠す

アテネの大学病院で、肝胆膵のカンファレンス判断とLLMの提案を比べた研究が出ました。全体の一致率は91.7%(κ=0.841)ですが、判断が複雑な症例では62.5%(κ=0.304)まで落ちています。全体の数字だけを見ると使えそうに見えて、実際に迷う場面ほど外れるという形です。導入を検討するときは、平均ではなく難しい側の数字を聞くのがよさそうです。

肝胆膵外科のカンファレンス判断とAI(LLM)の治療提案の一致率を検証したギリシャの単施設研究という論文。

  • アテネの大学病院で2025年7-12月にMDTで検討した肝胆膵症例の要約をLLM(Gemini)に入力し、MDT決定との一致率を後方視的に比較した
  • 全体の一致率は91.7%(κ=0.841)だったが、判断が複雑な症例では62.5%(κ=0.304)まで低下した
  • 単施設・後方視的研究であり、複雑症例でのAIとMDTの乖離は臨床的判断の個別性を反映するとしている

出典:HPB (Oxford) / Reliability of artificial intelligence in hepato-pancreato-biliary clinical decision-making: a retrospective comparative analysis with multidisciplinary team meetings.

サトシサトシ
単純な症例で使えても複雑な症例で外れるというのは、むしろ実務での使い所を考える上で参考になります。

救急の滞在時間は、8分短くなった

整形外科救急でAIの骨折検出を導入した前後で、滞在時間を比べた研究です。骨折を除外した8,253件では平均135.6分から127.5分に短縮しました(群間差マイナス7.99分、p=0.004)。骨折が確定した群では有意な変化がありません。短縮は待ち時間が長い層に寄っていて、90パーセンタイルでは24分縮んでいます。平均だけ見ると小さく、詰まっているところには効いた形です。

AI骨折検出ツール導入前後で救急外来の滞在時間を比較したという論文。

  • 整形外科救急の骨折除外8253件・骨折確定6864件を対象に、AI検出ツール導入前後で救急外来の滞在時間を比較する前後比較コホート研究を実施した
  • 骨折除外群の平均滞在時間は135.6分から127.5分に短縮(群間差-7.99分、p=0.004)し、骨折確定群では有意な変化はなかった
  • 滞在時間短縮は上位層に集中し(90パーセンタイルで-24.0分)、観察研究のため因果関係は示せないとしている

出典:Int J Med Inform / AI-assisted radiographic fracture detection and length of stay in the adult ambulatory orthopedic emergency department: a before-after cohort study with a disease-specific internal control.

サトシサトシ
救急のスループットに実際に効いた例です。骨折除外例だけ短縮というのも納得感があります。

国内は実測値を出す発表が出てきた

精神科向けAIのMENTRAが、6カ月で会話1,356件・190.1時間分を記録の下書きにしたと公表しました。下書きが届くまでの中央値は18秒、96.7%が確認と修正を経て正式な記録になったとしています。手書き想定との比較で約135時間の削減という試算は同社のものですが、運用の実数を出す発表は比べるときに助かります。

精神科向け医療AI「MENTRA」が記録業務の実測効果を公開し、無料トライアルを開始するという発表。

  • MENTRAは、精神科病院での2026年2月から8月の6カ月間に、会話1356件・190.1時間分を記録の下書きにしたと発表した
  • 下書きが届くまでの中央値は18秒、下書きの96.7%が医療者の確認・修正を経て正式な記録として採用されたという
  • 手書き想定(1件8分)との比較で診察記録だけで約135時間の削減と試算する。トライアルは2026年10月31日申込分まで1カ月間無料

出典:株式会社MENTRA / 精神科病院やメンタルクリニックの業務をラクにする医療AIサービス「MENTRA」、医療機関向けに期間限定の無料トライアルを開始

サトシサトシ
書く仕事を減らす具体的な数字が出ているのはいい。ただし自社集計なので、第三者の検証も見てみたいです

特に注目された10本

小児病院のEHRで発注時の操作回数を減らす介入を行い、効果を検証したという論文。

  • 米国の小児3病院で2024年の入院薬剤オーダーを対象に、頻用薬にデフォルト設定を導入する前後比較を行った
  • 22件のオーダーで操作回数の中央値は3.20から0.39に減少した(p<0.001)
  • 新設リストの採用率は9.6%から15.8%への上昇にとどまり、システム全体への効果は限定的だった

出典:Appl Clin Inform / Reducing Order Friction in Pediatric Electronic Health Record Systems: A Quasi-experimental Pre-Post Analysis.

サトシサトシ
発注時の手間を減らす設定は現場にありがたいはず。ただ普及率が上がらないと効果は薄いですね。

TAVI後の長期死亡をマルチモーダルAIで予測し、スイスと日本の2施設で外部検証したという論文。

  • 2014年から2023年にTAVIを受けた患者3991例(開発2985例、外部検証1006例)の多モーダルデータでAIモデルを開発した
  • 外部検証でのC-indexは全死亡予測0.712、心血管死予測0.776で、従来のSTS-PROMなどのリスクスコアを上回った
  • 外部検証は日本の1施設(1006例)のみで行われた、後ろ向きコホートでの検証にとどまる

出典:Lancet Digit Health / Multimodal artificial intelligence-based long-term mortality prediction after transcatheter aortic valve implantation: a multicentre development, validation, and testing study.

サトシサトシ
外部検証が日本1施設だけなのが気になる。C-index0.71は「使える」というより「まだ研究段階」の数字だと僕は思う

心電図画像からAIでATTR-CM疑い例を絞り込み、多国籍コホートで検証したという論文。

  • Yale New Haven Healthのデータでモデルを開発し、5つの多国籍コホートと3つのスクリーニングコホートで外部検証した
  • 内部検証でのAUROCは0.84(感度0.72、特異度0.86)、外部コホートでは0.78から0.89の範囲だった
  • AI心電図と心エコーを順に使うと陽性的中率は0.24から0.66に上がる一方、感度は0.84から0.68に下がった

出典:JAMA / Electrocardiogram-Based Deep Learning to Prioritize Testing for Transthyretin Amyloid Cardiomyopathy.

サトシサトシ
見逃されがちな病気を心電図だけで拾えるのは魅力的です。感度と特異度のトレードオフは臨床導入の設計次第だと感じました

精神科向け医療AI「MENTRA」が記録業務の実測効果を公開し、無料トライアルを開始するという発表。

  • MENTRAは、精神科病院での2026年2月から8月の6カ月間に、会話1356件・190.1時間分を記録の下書きにしたと発表した
  • 下書きが届くまでの中央値は18秒、下書きの96.7%が医療者の確認・修正を経て正式な記録として採用されたという
  • 手書き想定(1件8分)との比較で診察記録だけで約135時間の削減と試算する。トライアルは2026年10月31日申込分まで1カ月間無料

出典:株式会社MENTRA / 精神科病院やメンタルクリニックの業務をラクにする医療AIサービス「MENTRA」、医療機関向けに期間限定の無料トライアルを開始

サトシサトシ
書く仕事を減らす具体的な数字が出ているのはいい。ただし自社集計なので、第三者の検証も見てみたいです

医療・介護文書をAI-OCRで構造化データに変換する機能を共同開発し、商用提供を始めるという発表。

  • United Vision & Companyとアイ・エス・ビーが、医療介護連携基盤「Pubcare Pro」向けにAI-OCR機能を開発し2026年8月28日に商用提供を開始した
  • 診療情報提供書や訪問看護指示書など多様な帳票に対応し、認識精度は95%以上を安定して確保しているという
  • 現場ヒアリングでは1文書の確認・入力に従来30分から1時間を要していたとしており、転記業務の削減を狙う

出典:株式会社United Vision & Company / 株式会社United Vision & Companyと株式会社アイ・エス・ビー、 医療文書を構造化データへ変換する 「Pubcare Pro AI-OCR 機能」を共同開発、商用提供を開始

サトシサトシ
紙とFAXが残る医療現場の構造そのものへの投資という感じがする。精度95%は自己申告なので実測が見たい

AI骨折検出ツール導入前後で救急外来の滞在時間を比較したという論文。

  • 整形外科救急の骨折除外8253件・骨折確定6864件を対象に、AI検出ツール導入前後で救急外来の滞在時間を比較する前後比較コホート研究を実施した
  • 骨折除外群の平均滞在時間は135.6分から127.5分に短縮(群間差-7.99分、p=0.004)し、骨折確定群では有意な変化はなかった
  • 滞在時間短縮は上位層に集中し(90パーセンタイルで-24.0分)、観察研究のため因果関係は示せないとしている

出典:Int J Med Inform / AI-assisted radiographic fracture detection and length of stay in the adult ambulatory orthopedic emergency department: a before-after cohort study with a disease-specific internal control.

サトシサトシ
救急のスループットに実際に効いた例です。骨折除外例だけ短縮というのも納得感があります。

研修医のインバスケット業務を個別分析付きコーチングで改善した米国単施設の研究という論文。

  • 米国の内科PGY2・3の研修医を対象に、個別EHR分析データを用いたコーチング介入の前後でインバスケット指標を比較した
  • 患者対応の折り返し時間が2.2日短縮し(p<0.001)、電話対応の平均時間も1日0.99分から0.74分に減った(p=0.03)
  • 研修医の主観的な負担感や自信度は有意に変わらず、指標改善が体感には直結しなかったとしている

出典:J Gen Intern Med / Leveraging Individualized Electronic Health Record Learner Analytics to Improve Resident Inbasket Management.

サトシサトシ
指標は良くなっても燃え尽き感は変わらないというのが正直だなと思いました。可視化だけでは足りないのかもしれません。

肝胆膵外科のカンファレンス判断とAI(LLM)の治療提案の一致率を検証したギリシャの単施設研究という論文。

  • アテネの大学病院で2025年7-12月にMDTで検討した肝胆膵症例の要約をLLM(Gemini)に入力し、MDT決定との一致率を後方視的に比較した
  • 全体の一致率は91.7%(κ=0.841)だったが、判断が複雑な症例では62.5%(κ=0.304)まで低下した
  • 単施設・後方視的研究であり、複雑症例でのAIとMDTの乖離は臨床的判断の個別性を反映するとしている

出典:HPB (Oxford) / Reliability of artificial intelligence in hepato-pancreato-biliary clinical decision-making: a retrospective comparative analysis with multidisciplinary team meetings.

サトシサトシ
単純な症例で使えても複雑な症例で外れるというのは、むしろ実務での使い所を考える上で参考になります。
論文 画像診断AI 注目 2026-08-27

多施設のEEGデータで脳波解析AI基盤モデルを開発し外部検証したという論文。

  • 米国4施設1万8677人分のEEGで開発し、48施設1573人分の外部データセットで専門医と比較検証した
  • 17項目のEEG所見でAUC0.86~0.98を達成し、外部検証では内部検証比でAUCが最大2.12ポイント低下した
  • けいれん検出や棘波検出では専門医コンセンサスと同等以上の一致度を示したが、年齢や性別による性能差も一部認められた

出典:Lancet Digit Health / Toward unified and comprehensive automated electroencephalogram interpretation: a multicentre development and validation of an electroencephalogram foundation model.

サトシサトシ
基盤モデルが多施設でここまで崩れずに機能するのは地味にすごい。専門医との差分をどう使うかが次の焦点だと思う。

スマホとLINEだけで完結するオンライン診療サービスが正式オープンしたという発表。

  • 医療ダイエットや性感染症、アフターピルなど9分野を扱い、LINEでの問診から予約・処方まで完結するサービスとして開始した
  • アフターピルは72時間対応薬が総額8900円、120時間対応薬が総額10900円で、決済当日に発送するとしている
  • 東京23区限定で決済後最短1時間で届くバイク便オプション(5500円)も用意しており、対象年齢は18歳以上としている

出典:診察ダッシュ / 【8月27日OPEN】スマホで完結するオンライン診療『診察ダッシュ』が正式オープン!「医療ダイエット」「性感染症」「アフターピル」など全9メニューで、自宅からいつでも相談できる「LINE診療」開始

サトシサトシ
自由診療とはいえ、価格や配送体制までここまで明示されているのは分かりやすいですね。安全性の説明表示も丁寧だと感じました。

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